この並中を(というよりもむしろ並盛市全土を)支配下においている我らが恐怖の風紀委員長は 「席、替わってよ」なんていうあたしには選択権のない (そして現国の苦手なあたしにはあの文脈からはとてもじゃないけれど理解できない) 要求を気まぐれに(しかも無表情に)すると、「用事は済ませた。」とばかりにさっさと帰ってしまった。 ……しかもよりによって窓から華麗に飛び降りて。 ちなみにここは3階ですけど、脚、大丈夫だったんでしょうか……? まぁ相手は"あの"雲雀さんですから、『なんともない。』ってもし言われても『左様ですか……。』とあたしはいとも簡単に言えてしまうけれども。 だって、草壁副委員長とか、明らかに体格的に不利な相手よりも強いんでしょ? (じゃなきゃ風紀委員の委員長なんてできるはずないだろうし……。) 「(それにしても、雲雀さんって、実は奇妙、というかおもしろいことばかりしでかしてる人なんだな……。 どれもこれも、かっこよくて様になっているからそうは見えないんだけど。)」 いかにもアクション!って感じで3階から飛び降りた雲雀さんを見ながらあたしが抱いた彼への印象は、 今まで噂で聞いてきた彼とは全く異なる、おもしろい(むしろ興味の湧く……?)人間だった。 「席替えしたいならあたしじゃなくて担任に交渉してください。」なんて生意気にも言ったのがいけなかったのかなぁ……? 妙に機嫌が悪かった気がする。あれ?でもありがとう、なんて言わなさそうな人なのに (あたしの中の雲雀さんのイメージって……)妙に丁寧な感じで言ってたし…… 「……ってそんなことを考えている場合じゃないじゃん……!!」 あたしは自分が数学の課題を出されたせいで居残りさせられているという事実を思い出すと、思わず大声を上げてしまった。 プリントは雲雀さんが来てから全然進んでいなくてあたしを凍らせた。 もう陽は落ち始めていて、東の方の空はもうすでに鮮やかな群青色が忍び寄って来ていた。いくつかの星が瞬いているのも目に入る。 「まっ、いっか……。」 そうつぶやくと、あたしはくすり、と思わず笑ってしまってからプリントに数字だけを書き入れ始めた。 もちろん考えて書いているわけではない。早い話が適当に埋めているだけにすぎない。 2をベースに(もちろんこれは某お笑い芸人の影響を受けて、だ。なんて単純。)気まぐれに5だとか8だとかを交ぜて回答していく。 途中式だとか説明だとか一切なしの不親切な解答。 回答を終えると、明日きっと怒られるだろうな、なんて思って苦笑しながらもあたしは荷物をまとめるて、あたしはプリントを持って職員室へ向かった。 自分の作った途中式の抜けた回答はあたしが雲雀君に抱いた気持ちを自分に回答するのに似てると思った。 過程なんてなくて、いきなり興味が湧いた、なんていう回答。 |