雨が止む気配はない。 未だに雨粒がそこかしこに強く打ち付けている。 傘が、ずっとバチバチと、フライパン上で油が跳ねたみたいな音を奏で続けている。 だが、オレは今、そんな煩わしい音もさほど気にならない。 今のオレは、傘もささずに墓石の前に無言で涙を流しながら立ち続ける しか目に入らなくなってしまっているからだ。 このオレが、何をしているというのだ……?たった1人側近が死んだ。ただそれだけで……。 時折 が、カス鮫の墓石を愛しそうに撫でるのを見ていると どうしようもなく苦しくて……。 「すいません……ボス。」 涙を拭いたらしく、 の顔は目が真っ赤に腫れた以外は普段とほとんど見かけは同じに見える。 はこちらをやっと向いたかと思うと、無言で傘を押し戻した。 途端に雨粒が風に乗って飛んできたのが、ビチャッと顔についた。 「バカ野郎が。」 オレはそれだけ言って、 の方に傘の位置を戻した。 何か言いたげにやつは口を開けたが、上手く言葉が見当たらなかったらしく、結局「すいません。」とだけ言って一瞬オレの方を哀しそうに見た。 そんな顔、すんな。 そんなんじゃオレが…… 「ボス。」 「あぁっ?」 「本当に……ありがとうございました。」 深々と礼をしたかと思うと目を押さえた。 「ボス、帰りましょう。」 力なく微笑んだかと思うと、 は逃げるように車へ向かった。 駆け抜けたあいつを、オレは追いかけられなくて…… 帰りの車は、妙にワイパーの奏でる音が、耳についた。 「ありがとうございました。」 はそう言うとまた、スクアーロの物だった部屋に入っていった。 その前に、「あたし、ヴァリアー、やめます。」と が言い、 オレが吐き捨てるように「勝手にしろ。」と言ったなんていう酷く陳腐なやり取りがあったのだけど。 オレは、オレはオレはそんなことが言いたかったんじゃなかったはずだ。 そうでなければこの細胞が死に逝くみたいな痛みは説明できない。 答えはきっと、オレに、オレ自身に、意図的に隠されてしまった。 |