「 、俺も麦茶のおかわりもらっていい?」 綱吉は麦茶を一気飲みした後にそう言って立ち上がった。 まずい。今山本君と2人っきりにされてしまったら気付かれてしまうじゃん。 あたしはそう考えたが早いか、綱吉からグラスを取ると、「人ん家の冷蔵庫を勝手に開けちゃダメなんだよ。」と言って部屋を出た。 ゆっくりゆっくり麦茶をいれて、ついでにみんなでたべられそうなお菓子をゆっくりゆっくりと探した。 (ポテトチップスの最後の1袋を発見!!) 階段を 駆け降りる 部屋に戻ると綱吉はなぜか顔が真っ赤で、山本は普段から笑ってばっかなのに更に笑ってて、なんだか変な感じだった。さっきとは違った感じに居づらい。 もしかしてまた喧嘩でもしたんだろうか。あたしがいると、怖がっちゃうから、かな? それともあたしに隠れて悪口とか言ってたりするのかな……? そんなことばっか考えてしまう。あたしは不安ばっかだ。さっきからおかしい。みんながおかしいからあたしもおかしいってことにしとく。 恋、なんてしてしまうとろくな事がないんじゃないだろうか? 「綱吉、はい。麦茶。あとさ、ポテトチップスがあったからついでに持ってきたけど食べる?」 綱吉は曖昧に笑ってからグラスを受け取り、山本君はこれ以上は笑えないだろうというあたしの予想を易々と破って更に嬉しそうな笑顔を浮かべた。 「んじゃ、俺そろそろ帰るわ。数学は終わったし、あとは国語と社会だから適当になんとかするし。」 麦茶とポテトチップスご馳走様、と律儀に言うと、山本君は帰っていった。 「山本君、行っちゃったね。綱吉はもう帰るの?」 あたしはそろそろ日が落ちてきたな、と窓の外を見て思い、そう言った。 「俺は に呼ばれたから来たんだけど。なぁ、それってもう帰ってほしいっていう意味?」 「はっ!?何言ってんのよ綱吉。今日なんだか変だよ。何でそんなこと言うの?」 あたしはこんなにも綱吉のことが好き、なのに。 どうして綱吉は気付いてくれないの?それとも気付かない振りをしているの? あたしたちは数秒にらみ合った。 「……もういいよ。数学終わったし、終わってないのって国語だけだし。そんなに帰りたいなら帰れば? あたしのお母さんもその内帰ってくるだろうし、っていうかきっとななさんも綱吉の帰りを待ってるよ。」 「 こそその言い方はないだろっ! んだよ俺は に呼ばれたから来たのに。こんなことなら家にいればよかったよ。」 そう言うと綱吉は床に置いてあったかばんを乱暴に取ると部屋を出て行った。 こんなつもりじゃなかったのに……と思いながら1人っきりになってしまった部屋を見回す。 机の上にはルーズリーフと綱吉の数学のテキストが置きっぱなしになっていた。 何だよあいつ。ホントにバカだな。忘れ物してるし。 これを返しに行くのは気まずいけど、返さなくて気まずくなるのはもっと嫌だ。 あたしはばらばらになっていたルーズリーフをまとめた。 1番上の1枚を除いて全部白紙。もったいないな。 それよりもこうなってくると逆にその1枚に何が書いてあるのかが気になる。 未定鋳物か一瞬躊躇したけど、結局誘惑に負けて見てしまった。(ま、いいよね。どうせ綱吉のだし。) そこには男の子っぽいっていうか男の子らしい字が2種類、1行ずつ交互に並んでいた。 明らかに綱吉と山本の字だ。 あたしはその文字の羅列を見ると、テキストとルーズリーフだけをもって家を出ると、エレベーターの所まで一直線。 不運なことに今は上っている真っ最中らしく、降りるのにはこの階に来るまではまだ時間がかかりそうだ。 あたしはすぐさま走り、階段を駆け降りた。 今ならまだ、間に合う。いや、間に合わせる。 |