「かき氷の次はどうすんのさ。」





と綱吉が聞いてからしばらくたった。 あたしたちはまだ次に何をするのかを決められずにぶらぶらしている。 目の前を歩いているのはらぶらぶのカップル。あたしたちとは大違いだ。 (すいません。くだらないですよね。すいません。もう言わないからお願いします石を投げつけないでっ!!) 彼女の方の浴衣は紺色に朱い金魚が描かれたものだった。とってもよく似合ってる。





「綱吉ー。金魚すくいしよーよー。」



「はいはい。でも は金魚すくえたらどうするつもりなのさ。」



「金魚位だったらいくらペット禁止のマンションだからって禁止されないよ。大丈夫。飼えるよ。」



「俺が聞いてるのはそういうことじゃなくって、 がちゃんと金魚の面倒をみられるかどうかってことだよ。」





いっつも結局おばさん任せだろ、と言って綱吉は呆れた表情をした。
悪かったな、いつもお母さん任せで。
いつも獄寺君とか山本君任せの君だけは言われたくないがなっ!!





「かわいい金魚鉢買って毎朝毎晩かかさず餌やってやるよ。」



「どうだか。」



「よっしゃ!!金魚すくいの模擬店はっけーんっ!!綱吉、勝負だっ!!」





俺の話無視かよ、っと一応突っ込みを入れた後に、綱吉はしぶしぶあたしに付き合ってくれた。 (あっ、なんか今別な意味に取れそうな発言したけどそんなんじゃないぞ、そんじなんじゃ。)
えいっ、とかわー逃げたーとかあたしが隣で騒ぎながらすくっているのを止めつつ自分も金魚をすくう。
あっ、綱吉のやつ赤くて大きいやつすくった。あたしのすくったのはこんなにちっさいのに。 よし、あたしもすくってやるさ!大きいのっ!!
って思ったら金魚が放されている水槽の中には綱吉のより大きいのなんていなかったよコンチクショー!!





「綱吉ずるいってそんな大きい金魚すくってっ!!」



「どこがどうずるいんだよ。正々堂々すくっただろ。」





そう言って綱吉が突っ込みついでに水槽からすくうやつ (これ名前なんて言うんだったっけ?ポイ?なんか捨てられそうな名前だった気がする)を勢いよく上げた。
あっと思ったときにはもう遅くて、紙はすっかり破れてしまっていた。





「綱吉のバーカっ!破れちゃってるじゃん。記録1匹。」



「はいはい。」





からかっているあたしを無視しつつ、枠をおじさんに返すと、綱吉は大きな金魚1匹の入った袋を変わりに受け取る。
んー、あたしのボウルには今ントコ3匹の金魚が入っているけど、どれもこれも水槽の中にはたくさんいる朱い金魚で、しかも小さいやつばっかりだ。 イマイチぱっとしない。悔しいことに。





「あっ、あの出目金すくえば?」





あたしの後ろから綱吉の声がする。
言われなくてもそのつもり、とあたしが言うと、そうだろうね、と言って綱吉は苦笑した。 こいつにはあたしのついた嘘という嘘が見えているのかもしれない。そうだとしたら嫌なやつだなー。





隅っこに狙った黒い出目金を追い詰めた。
ついにやったぜっ!!て心の中でガッツポーズ。
あたしはゆっくりと、かつ慎重にポイ(?とにかくすくうやつ)を上げる。
けれどもこの出目金も綱吉と一緒であたしの心の中が読めるのか、上げ始めたと思ったら、中心に向かって泳ぎ始めた。 ひらひらと可憐に尾びれを揺らしながら。





「あっ待って!!」





思わず大声を上げてしまう。勢いよくポイ(?もうこの名前でいいや。たとえ違っても)を上げる。





「残念でした。」





綱吉のからかうような声が頭上から降ってきた。
痛恨のミス。綱吉とお揃いだ。嫌だなーっ!





「だましたな。」





枠とボウルをおじさんに渡した後にあたしは綱吉に言った。綱吉は笑う。 あたしはおじさんから小さくて朱い金魚の入った袋を受け取る。





は元々あの金魚を狙ってたんだから俺は関係ないよ。」





うっとあたしが言うと、またも綱吉は笑った。本当に今日の綱吉はよく笑う。





「勝負はあたしの勝ちだからね。すくった数なら。」





あたしがそう言ってもまだ綱吉は笑っていた。
はいはいそうですね、だって。
本当に張り合いがいのない奴だなぁ。





「まぁ、でも綱吉のが大きいから引き分けにしてあげてもいいよ。」





あたしがこう言うと、綱吉は驚いたのかこっちを見た。
おいおいそれは暗に普段のあたしはそんな殊勝なこと言わないっていう意味なのかそうなのか!?




















「これ、やるよ。」





綱吉は歩きながら突然そう言うと、金魚の入った袋をあたしに差し出した。





「えっ、何で?」



「いらないの?」





いや、そうじゃないけど、とあたしが言うと、綱吉は目を泳がせた。





「いや、別にうちで飼ってもいいんだけど が飼った方がいい気がする。」





だからさ、と言うと綱吉は強引にあたしに袋を押し付けた。 袋の中の水が揺れたのを感じる。





「綱吉。」



「何?」



「しょうがないから飼ってやってもいいよ。 名前もちゃんとつけてやって、かわいい金魚鉢の中で飼ってやるの。餌だって毎朝毎晩かかさずにやってあげる。」





に飼ってもらえるその金魚は幸せものだな、と綱吉は言った。




















ポイ




















ヨーヨーすくいより、射的より金魚すくいの方がずっとずっと楽しかった。
その後に見た花火もずっとずっと金魚の優雅な泳ぎ方の方があたしにはずっとずっときれいに見えた。





(かき氷が食べたい) ☆彡 (あっ、ケータイが鳴った)