肝試し以来、オレと さんは少しずつ会話を交わすようになった。
おはようの挨拶に始まり、バイバイでお別れ。 休み時間に話すということは稀だけれども、それでもプリントを回すときに軽く話したりだとか、 ちょっとずつかもしれないけれども打ち解けてきたんじゃないかとオレは思う。
けれどもオレは同時に思うのだ。





『これはクラスメイトのそれでしかない。』





と。
オレは不安で不満で堪らなかった。
他人を想うということは他人を憎むということととても似ている……むしろ表裏一体なのではなかろうかとさえ思う。





恋は自分勝手だ。





オレは自分が さんとずっと話すための努力なんてあんまりしていないのに、
彼女が席を立ち、 さんの元へ向かうことを哀しく思うのだから。






























ホームルームは大抵退屈で無意味だ。
ショートホームルームにさえまともに意味を見い出せないオレが、ロングホームルームに積極的に参加できるはずがない。 クラスの約半分の人間と同じように、オレは先生の話を聞いているようで聞かずに消化。するつもりでいた。





「期末も終わったことだし席替えするぞー。」





先生のこの言葉を聞くまでは。










隣の席でなくなったらオレと さんの関係はどうなってしまうんだろうか……?





壊れてしまうような気がする。
だってオレはどうしようもなく臆病で、与えられた機会がなければ話すことなんてほとんどできないのだ。 オレは何かきっかけがなければ何もできないのだ。 高々くじを引くだけだというのに、オレの心臓は早鐘を打っていた。
バカじゃないだろうか?と自分でも思うのだが、こればっかりは自分の意思ではどうにもならない。深呼吸なんか意味を成さない。
……っていうか今この状況で深呼吸ってMAX不審じゃないか?
恐る恐るくじを引き、中を開けると中にある数字は1。1番前の1番端。とは言っても窓側ではなく廊下側。最悪。










席を移動させて、誰がどこの席だか言い合ったりしていると、オレの隣は さんで、遠くを見ると山本の隣が さんだった。
何かデジャブっぽい。と思ったらちょうど肝試しのときに似ていて、オレはがっかり。
元々こうなる運命だったんじゃないか?とさえ思えてきた。





何だか鬱になりそうだ。





運命から見放された自分が嫌で、そして何より自分じゃどうすることもできず、ただただ卑屈になる自分に。
寝る。






























優しく揺り起こされるとオレの前には さんがいて、オレは自分の状況がつかめず目をパチパチさせる。





「沢田君。球技大会どの種目にするのか黒板に書かなきゃ。」





周りを見回すと、誰1人席は変わっていなくて、今までのが全て夢だったんだとオレは思い知らされる。
慌てて人数が足りていないドッジボールの所に名前を書くと、担任の先生とクラス委員に睨まれた。
それでもオレは安心していて、大丈夫。と思えていたのだから不思議だ。
あとどれだけあの席でいられるかなんてわかんないけど、今を大切にしたいなんて思ったオレは単純なだけの人間だろうか……?





     ☆+゜     





永遠が途切れる夢に目を覚まして