連日雨が降り続いたために、ひどくじめじめとして蒸し暑い日ばかりだったが、今日は久し振りにからりと晴れた。
とは言ったものの、しばらく梅雨明け宣言が出される予定はない。さしあたり休憩とでも言うべきなのだろうか……?
今年は梅雨が長いらしいから。
もしかすると梅雨が夏休みにまで被ってしまうかもしれないらしい。
本当に長い。そして憂鬱だな。と、オレはそれを伝えた5時のニュースをぼんやりながら思い出す。






























外が晴れたこともあり、体育の授業は今まで体育館でバレーボールだったのが、たった1時間ではあったのだが水泳が行われた。
プールに張られた水はほんの少しばかり冷たくて、だからこそちょうどいい涼になった。
オレを除いた男子は水泳だと決まった瞬間からおおはしゃぎしていたけれども、 女子は「日焼けするー!」とか「寒いー!」とか不平不満を口にしていたいて、 でも、それなのにいざ授業が始まると、わりと女子も楽しんでいるように見えて、泳げないオレとしては複雑な気分だったりした。
本格的な授業じゃなくて、水遊びと言えるようなものだったからだと信じたい。というかオレはそうだったからいつもほど嫌じゃなかった。






























水泳の後の午後の授業は、ただでさえ授業とは退屈なものであるのに、より一層ぼんやりとしており、それでいて眠たい。
身体が疲れているからなのか、それとも水面に揺れる感覚を夢見、地上でもたゆたうことに憧れているからなのか、 未だ水に浮かぶ感覚が皮膚に張り付いて離れない。
前の席の さんの長い黒髪はまだ少し湿っていてプールの塩素のにおいを宿しており、 開け放たれた窓からふわりと風が入ってくるたびに、そのにおいをオレの周りの空気に漂わせた。





ひょっとしてオレの魂はまだプールに残されていて、身体が教室にあるにもかかわらず泳ぎ続けているのかもしれない。





なんていう突飛なアイディアが唐突に現れ、そして弾けて消えた。





オレの心は午後の教室にちゃんとある。





さんの髪が上げられてポニーテールになってからは、オレは彼女の生白い首筋から目が離せなくなっていたのに、 まだ身体は泳いでいるみたいにふわふわとしていたから。










午後の授業は流れる、流れる。ゆるやかに、絶え間なく。
オレの身体は未だどこかを泳ぎ続けているのに、そんなことには構うことなくこの教室は、世界は、廻っている。
オレはきっとどこまでも泳げるんじゃないかって錯覚した。





      ☆+゜     





人が何処までも泳いでゆけるとき