「制服が間に合わなかったのは計算外だ……。」 並盛中学校潜入の2日前、 は新居のアパートで呆然としてしまった。 ACT.5が呆然としてしまうのも当然で、最後の最後でミスが起こってしまった。 なんと業者の手違いで並中の制服であるブレザーではなく、学ランが届いてしまったのだ。 「(セーラー服ならまだしも……学ランって……。)」 チッ、と思わず舌打ちしてしまう。 「在庫切れで1週間はかかるって……そんなの書類の捏造した方がよっぽど早いっつーの……。」 なんでも業者曰く、最近並盛一帯の中学校の男子用制服の一括購入があったらしく、それに紛れてしまった可能性があるのだそうだ。 その上、まとまった買い付けだったおかげで、前述の通り、運悪く在庫も切らしてしまったらしい。 うなだれるばかりの である。 「幸先、わりぃ……。」 そう呟くと は一時のことだから、と自分をなだめながら男子として生活することを決意した。 「えー夏休みも終わって、これで2学期が始まったわけだが、ここで早速、転入生を紹介する。イタリアから来た 君だ。」 「コンニチハ。 です。これからよろしくお願いします。 あと……制服が間に合わなくて2つ前の学校の制服だった学ランですが、気にしないで下さい。」 「ちょっと……かっこよくない〜?」 「帰国子女だって!!」 などと、こそこそ転入生の評価をし合っている女子の間を縫って、 は指定された席に着く。隣は気の弱そうな男子だ。 「隣、よろしくな。」 「ああ……うん。よろしく。」 「名前は?」 「沢田綱吉。」 「……なんつーか、クラシカルな名前してるな。歴史上の人物っぽいっつーか……。」 気にしてるんだけど、と言わんばかりに表情が固まった沢田を見て、「あっ……、地雷踏んだ?」と が思った所、ちょうど担任の叱責が入った。 「こらっ! 、沢田!しゃべってばかりいないで話を聞け。今は委員会を決めてるんだ。他人事だと思っていてはいけないぞ。 あっ、そうだ、 。学校に馴染むのに委員会に入ってみるって言うのはどうだ?」 思わぬ担任からのフリに は驚いたが、案外いい考えかもしれない、と思ってあっさり承諾を決めた。 となると入るとすれば、 「いいっすよ。じゃあ風紀委員で。」 の周りの空気が一瞬にして凍る。 「えーっ……!?本日2度目の地雷ですか!?」と心の中で思わず叫ぶほど は焦る。それほど空気は凍っていた。 「えっ……あの、いけませんか?」 「あっ、いや、その……風紀委員はあまりやりたがる生徒がいないからな。」 早めに決まってよかったよかったって……そんなこと言われても!!とどんどん不安になっていった。 学ランを着た生徒が『風紀委員』と書かれた腕章をつけているのを見たという理由だけで、安易に決めてしまった自分を は恨む。 逆にクラスに馴染みにくくなっている気さえした。 「よし。全委員決まったことだし、今日の放課後から早速委員会があるから各自忘れずに出席するように。」 「あの……やっぱ風紀委員やめます!!」と言うタイミングを が失っている間に委員は全員決定してしまい、 ホームルームも終了。担任も消えてしまった。 当然、隣の沢田君は哀れみの眼差しで の方を見ている。 「よぉっ、転校生。」 そう言って の肩を軽くポンッと叩いたのは山本だった。 「俺、山本武っつーんだ。よろしくな。呼び方は山本ーでも武ー、でも何でもいいぞ。ツナとは仲良くなれたか?」 さわやかな笑顔を振りまく山本相手に は「あぁ……うん、まぁ。」と曖昧に返事をした。 「そっか!そりゃよかった!!こいつ普通にしてりゃそんな風には見えねーんだけど実はすげー頼りになる奴だし。まっ、勉強は俺と同じで補習組だけど。」 山本が言った冗談でひとしきり3人は笑うと は思い出したように言った。 「あっそうだ。山本もツナって呼んでるし、沢田のこと、ツナって呼んでいいか?俺も でいいし。」 「あぁ。オッケー。」 「んじゃ、俺も って呼んでいいのな?」 「もちろん。大体俺、海外にいた時間の方が長いから、ファーストネームで呼んだり、呼ばれたりする方が自然なんだ。」 「マジ?んじゃ俺も山本じゃなくて武って呼べよ。」 「あぁ。」 こうして に並盛で始めての友人ができた。 真実を告げていないことがチクリと胸を刺した気がしたが、 は振り払う。仕方ない、と言い聞かせて。 |