不意に左肩を捕まれてあたしはびくっと振り返った。 あたしの視線の先には、スクアーロが怒ったような哀しんでいるような、どちらとも取りがたい表情をしてあたしの方を見つめて立っていた。 「あ、あのさ、 ……、」 「え、何?」 「彼、なんか に話あるみたいだし、あたしたちは先に生物室に行ってるね。」 「あ、え、」 昨日のことがあったせいか、あたしが待つように言う前に、友達2人はまるでスクアーロから逃げるようにそそくさと速足でこの場を去っていった。 あとに残されたあたしはなんだか心細いような気さえする。 別にここは知らない場所でもなければ、今あたしの目の前にいるスクアーロは知らない人でもないというのに。 むしろスクアーロは一緒にいて安心感だとか楽しさだとか嬉しさだとかを得られるべき対象なんじゃないだろうか。 実質的なことは別として、一応、こ、告白はされたわけだし。あたしも好きだって言ったわけだし。 「 。」 「……。」 「オレが何かしたのか……? オレはこんな人間だからよぉ、ちゃんと言葉で伝えられなきゃ何がどうなったのかがさっぱりわかんねえんだよ。」 無言でうつむきっぱなしのあたしを前にしているせいか、 いつもの自信たっぷりのスクアーロの声と違って、小さな声だけど訴えるようなニュアンスのある口調だった。 やっとの思いで顔を上げて、あたしより頭一つ分背の高いスクアーロをあたしは見上げる。 ぎゅっと口を結んだスクアーロの顔が、あたしの目に入ってきた。 「スクアーロ……。」 「……どうしたぁ?」 冷たい色をしたスクアーロの目にあたしは顔を覗き込まれる。 その目にはあたしの不安を隠しきれていない表情が映り込んでいた。 けれども本当の所はどうなのだろう……? 彼の目にあたしは本当に映っていると言えるのだろうか……? 別にあたしである必要性なんて彼にはなかったのではないだろうか……? なんと言っても彼はやはり人を傷つけることを厭わない人間なのだから……。 きっとあたしみたいな人間1人傷つこうが傷つくまいが関係ないのではないだろうか……? ……あたし、最低だ。 「ごめん、スクアーロ。あたしにはやっぱり無理。」 あたしはそれだけ言うとスクアーロを置いて駆け出してしまった。 |