アンドロメダ・03





スクアーロは数日前にまたどこかへ行ってしまった。
忙しい男。
そんな風にしか思わなくなってしまった自分が嫌だ。
感覚が麻痺してしまっているんだろうと感じる。










今がまだ彼はあたしの見えない所でだけ罪を犯している。
だからあたしはまだほとんどゼロに等しいと言えるようなほんの少しの希望 (━彼が人を傷つけたりなどしないという希望━)を抱いていられるが、もし万が一、 彼があたしの目の前で誰かを殺す、あるいは傷つける、となってしまったとき一体あたしはどうなってしまうのだろうか……?




















救急車のけたたましいサイレンが鳴り響く。
ロビーの方が騒がしいと思ったら急病人だったらしい。
あたしは心配になってロビーへと急いだ。 そこにはまだ人だかりがあって、その中心には血痕が残されていた。





「……何、これ……。」





あたしが呟くと、たまたま隣にいた奴が、あたしの肩を叩いてきた。





、さっきの見てなかったの?」



「うん。サイレンの音を聞いて気になったから来てみたの。」



「あぁ、なるほど。」



「で、誰が運ばれたの?」



「ズッコ。 も知ってるだろ?大柄の不良だよ。 アイツが泣き虫ディーノに絡んでたらそこにスクアーロが来てさ、グサリ、だよ。 スクアーロの奴、ロビーになんて来たの初めてなのにさ。」





あたしの耳にはスクアーロが来てグサリ、しか残っていなかった。
少しずつ引いていく人だかり。あたしの隣にいた奴もその内どこかへ行ってしまった。
けれどもあたしは血痕を見つめたまま身じろぎもせずにいつまでもその場所から動けなかった。










恐れていたことがついに起こってしまって、あたしはただただ頭が真っ白になってしまった。





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