その日の夜、あたしはディーノにメールをしようとした。 何だかスクアーロのことを男子に相談するっていうことはすごく恥ずかしい。 でも黙っているのはすごく辛くて、相談したくなる。 男子のことは男子に聞かなきゃわかんない。 それが正直な気持ちだった。 あたしはディーノならわかってくれるはず、という特に根拠のない自信のもと、ディーノにメールを送るために名刺を確認した。 ら、ケータイの番号しか書いてなかった。 ちょ、え、おい、使えないじゃん!? 「もしもしディーノ?」 『あっ、もしかして ー?』 「あっ、うん。ていうかディーノ、名刺、ケータイの番号だけでアドレスなかったんだけど……。」 『えっ!?マジ!?』 ディーノは慌ててるのか変な声を出した。 あたしの目にはディーノが電話の向こう側でテンパってる様子がありありと浮かんでいる。 「(っていうか確認してなかったんだ……。)まぁアドレスはまた今度でいいよ。 それよりさ、昼間言ってたんだけど、あたし実はディーノに相談があるんだ。」 何分もの間ケータイを前にして、ディーノに相談するための第一声のために捻り出された言葉は、時間をかけた割りにありきたりなものになってしまった。 よく言えば簡素でシンプル。単刀直入で単純明快。 『あぁ。オレなんかでよければ話位聞くよ。』 「あ、りがとう……。」 あたしがディーノの優しい声のせいで、うっ、となっていると、ディーノは電話越しで笑った。 相変わらず優しい声。 「あのね、実はあたしスクアーロと付き合ってるんだけどね。」 あたしは一気に言ってしまおうと思ったはずだったのに、一度切れてしまった。 今まで色んな想いを溜めすぎていたのかもしれない。 いざ言おうとすると、涙のせいで音がのどに引っ掛かってしまった。 『どうした……?』 優しいディーノの声に、あたしは電話越しだというのに、頭を振ってしまっていた。 あたしは何でもない、と何でもないことない声にで言った。 スクアーロのことが本当に好きなこと。 でもその反面、スクアーロが修行だからと言って人を傷つけることを厭わないことが気に入らないこと。 ついにスクアーロが自分の目の前で人を傷つけてしまったこと。 そのせいでスクアーロと上手く話せなくて無視してしまうこと。 スクアーロを止められないあたしなんかは彼とは別れを切り出した方がいいはずなのに、それすらできないこと。 今もまだスクアーロが好きなこと。 一度話し始めてしまうと言葉は止まることなくあたしの口から流れた。 あたしが話している間中ずっと、ディーノはあたしの話を黙って聞いてくれていた。 |