アンドロメダ・12





「あたしがもし医者になっても、スクアーロのことは診ないよ。」



「えっ!?何でだぁ!?」





あたしがふざけながら言ったというのに、スクアーロはというと、ひどくまじめに驚いた顔をしていてあたしは笑い転げそうになった。
もちろん必死でそれを抑えながら、まじめな顔して煽るようなことを言う。
(冷静に考えればあたしってひどいことをしてるな。 だってスクアーロは寝っころがって完全にリラックスしてたのに、それがあたしのせいで一気に緊張の表情になったんだもの。)





「だってそうしたらあたしが治すからって、スクアーロはいっぱい戦うでしょ?いっぱい傷つくでしょ? そんなのあたしは嫌だな。 それだったらスクアーロが傷つけた人たちを診るんだから。 『スクアーロがご迷惑をお掛けしてすみませんでしたぁっ!!』って言うの。 『あたしが怪我を治して責任もとるんで許してあげてください!!』とも言うわ。 きっと色んな所に行かなきゃならないだろうけど、その間スクアーロはほったらかし。」





あたしが笑って言ったのに、スクアーロは妙に真剣な顔つきだった。
かっこよかった。
いつもより強く男の人なんだ、って思ってしまうような、そういう顔。





「バカ野郎!剣士は戦う時点で命かけてんだぁ。許す、許さねえなんていう問題じゃねえんだ。」





それに……、とスクアーロは少し小さな声で続ける。





「オレが斬った奴の家族だとかに が恨まれるのがオレは嫌だ。 そうしたら……オレは を守りたくて強くなろうとしてるのに、オレのせいで が傷つくじゃねぇか。」





そんなのオレは……と言いかけた所でスクアーロの言葉が詰まって、あたしは思わず 「嘘、嘘!あたしはスクアーロしか診ない!」と言って抱きついた。
その後にしたキスは今まででいちばんあったかくてやわらかかったのに、




















何であたしはこんなことも忘れてしまっていたんだろう……?
すっごくすっごく、大切なことだったはずなのに、それなのに、どうして……?





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