スクアーロは次の日に久しぶりに姿を見せた。 スクアーロはまたいつの間にかたくさんの傷を作っていて、あたしはスクアーロの姿を見た瞬間、また悲しい気持ちでいっぱいになった。 同時に苛立ちも起こる。 スクアーロはまだあたしがどうして怒ってるのかなんてわかっていないんだ。 真っ黒な絵の具か何かがつぶれかけた筆で擦り付けられたような気分になる。 スクアーロはあたしの方を見るとまるで様子を伺うような卑屈な眼差しで見ていて、それが余計にあたしを苛立たせる。 そんな目で見る位なら初めっから人を傷つけるような残酷なことするな。 汚い気持ちがドロドロと体内を流れた。 「 さん!」 ディーノ君の声がして振り返ると、あたしのノートを持って立っている。にこにこ笑顔で。 「もう写せたの?」 あんなにあったのに。とあたしが言うと、ディーノ君は苦笑いをした。 「写すだけだからだよ。それにあんまり長く借りてると悪いから。」 はい。と言ってディーノ君はあたしにノートを手渡した。 いくらノートといえど、8冊もあるとさすがに重くて、あたしの腕にはずしりと一気に負荷がかかった。 「別に今日授業で扱わない教科なら気にしないでくれてよかったのに。」 「え、あ、そうだったの!?」 わたわたしながらディーノ君は言うと赤面してしまった。 あたしはそんなディーノ君を見ていると、和ませてもらえるから、思わず笑ってしまう。 ディーノ君のこういう所って、実はすごく特別な能力なんじゃないかな?なんて考えたりもする。 「あ、あの、 さん。」 「そんなに改まらなくてもいいよ。 ってみんな呼んでるし、 でいいよ。」 「あっそう……?じゃあさ、オレのこともディーノでいいよ!……ってそうじゃなくて!」 あー、なんか調子狂っちゃうなー……とディーノ君……いや、ディーノは言うと、照れくさそうに鼻をこすった。 「あのさ、放課後空いてる?」 「あっ、うん……。でもどうしたの?」 「あのさ、オレ、勉強全然ダメでさ、だからエリカに教えてもらえたらなぁーなんて思ってたり……す、るんだけど……。」 ごにょごにょとはっきりしない調子でディーノは言うと、仔犬のような目であたしの方を見た。くぅん。 「無理なら、いいんだ!」 「何言ってんの!何でも聞いてねって言ったよ、あたし。」 あたしがそう言うと、ディーノはぱぁっと顔を輝かせた。 「本当っ!?じゃあ放課後頼むなっ!」 あたしが頷いたのを確認すると、ディーノはぱたぱたと自分の席へと戻って行った。 そこはさっきまで近くにスクアーロがいたはずの場所だったのに、今では数人の女の子とあたしの視線に気付いて手を降ってくれたディーノしかいなかった。 |