苦しいと思うと自然と思い出されるのは、僕の場合なぜだかわからないけれど、中学時代のことばかりだ。 ほかの奴等が言うような輝いていた頃ってわけでもなかったけれど、少なくとも充実した日々ではあったように思う。 (あえて僕が思い出とは言わないのは、多分前述の通り、さして輝いていたわけではなかったからだろうと僕は推測する。) 『雲雀君って完璧主義?』 頭の中で中学時代の出来事が再生を始める。 ……センチメンタルなのかもしれない。 僕は抵抗出来ずにいるのだから……。 「何、君。僕に何か文句でもあるわけ?」 「文句なんてないよ。」 「じゃあわざわざ口に出さないでくれる?」 気分悪いから。 「でも褒めてるわけでもないもん。」 「……もっと口に出す必要性なくなったんじゃない?」 僕の気分悪いから。 「ルールを守ることは大切だけど、そもそもルールに欠陥があることだってあるんだし。」 多少認めればいいじゃん。 妥協しろってこと? 簡潔に言えば。 君、僕をバカにしてるの? そんなつもりはないって。 じゃあ何?君は一体どんなつもりで言ったわけ? ヒツヨウアクってあるじゃん。 君、それ意味違うよ。 ……ん゛ー!! 「でも、だって、あたしはそのために雲雀君がみんなに暴力ふるったり、嫌われたりするのって、 規則が守られないことよりずっとずっと嫌なんだもん!!」 僕は彼女の言葉に圧倒されてしばらく何も言えなかった。 目を何度かしばたかせている間に彼女の放った衝撃の一言は整理され、僕の顔を熱くさせた。 「……君、馬鹿なんじゃないの?」 彼女から目をそらして僕がそう言うと、彼女は静かに「そうかもしれない。」と呟いた。 もう一度彼女に目を向けると、彼女は何か思い悩んでいるかのような表情を浮かべていた。 ほんの数メートルの距離が無限に感じる。 さっきまで僕ら二人は間違いなくやりとりをしていたはずなのに、今はそれがまるで嘘だったみたいに途絶えている。 さんの世界に、今僕は映れていないのだろう。 僕の眼はこんなにも彼女を焼き付けているのに。 彼女は僕の視線に気付くと、「ごめんね」を何度も言いながら、慌てて応接室を出ていった。 後に残された僕は顔の火照りをまだ処理出来ずにいて、そこに佇むよりほかになかった。 |