ミネラルウォーターを一気飲みすると、食道から胃へと冷たい温度が伝わっていった。
その感覚の後、僕は、ぐしゃぐしゃ、という酷い音を立ててペットボトルをつぶす。 僕は歪な形になったペットボトルを持つ手から力を抜くと、ふーっと長い息を吐いた。 僕はその後の文化祭のとき、 さんが実行委員に推薦されたときのことを思い出す。 彼女は嫌々引き受けたものの、いざ役職につくと真剣に取り組んだ。 たまたまホームルーム中だったときに僕は僕のクラスの前を通った。 他クラスが和気あいあいみたいな群れ合っている感がプンプンしている雰囲気なのに、この教室だけが殺伐としている。 「みんなで決めたことでしょう?何でちゃんとできないの?」 小学生じゃあるまいし。という さんの言葉にハァッ?と柄の悪い男子ら、化粧の濃い女子らが不満の声を上げる。 そんな奴らはほっておけばいいのに。 「植村さんたちもクラスの一員なんだから協力してよ!」 「ハァ?何であんたにそんなこと言われなきゃいけないわけ?」 「つか別にやりたいわけじゃないしぃ。」 「だいたいオマエまじウザいんですけどぉー。」 下品な笑い声を上げながら彼ら彼女らは「何アツくなっちゃってんのぉ?」みたいなことを言う。 お粗末過ぎて見ていられない。 僕はそう思うが速いか、気付けば「僕の前で群れないでくれない?」と教室に入って言っていた。 空気は凍り、まるで時間まで止められたような感覚に陥った。 「 さん、今日委員会の話があるから放課後応接室に来るように。」 そんな話ないのに、僕はそれを言うためにここにやって来ました。というような顔をして教室を出た。 なんだかその瞬間酷く疲れを感じた。 「雲雀君、委員会の話って何?」 「……どうして文化祭のこと位でアツくなったりしたの?」 「委員長、話が噛み合っていませんよ。」 彼女はそう言うと困ったような笑みを浮かべた。 「いいから僕の質問に答えて。」 「気に入らなかったんですか?」 僕は答えられない。 だって君が糾弾されている所なんて見たくなかったなんて言えるはずがなくて……。 さんは答えられないでいる僕を見やると、「どうせやるならみんなでちゃんとやりたいじゃないですか。」と呟いた。 そんなの無理に決まってるだろ。 わかってますよ。 じゃあなんで妥協できないの? 「……もしかして雲雀君はこの間のことをまだ根に持ってるんですか?」 「そうかもしれないね。」 「君が非難されている所なんて見たくなかった」って言ってしまえばよかったのに、僕の口から出たのは「君の方がよっぽど完璧主義だよ」。 そうかもねーと言って笑った彼女と、溜息をついた僕を夕暮れのオレンジが包み込んでいた。 |