空に出ている月は鉛色の厚い雲に覆い隠されていて、満月なのか三日月なのかさっぱりわからない。 ただ新月じゃないことだけが確かで、消えてないことが今のオレには少し嬉しかった。 オレは今酷く心がひしゃげているせいか、オレの 先輩への想いが潰えてしまうことへの恐怖が止まらない。 真っ暗闇からもう二度と脱出できないんじゃないかとオレは密やかに胸を痛めている。 (痛めているなんて手弱女っぽい表現だけど、まさに今のオレにぴったり、である。) 「少し肌寒いねー。」 そう言うと 先輩は白の薄いカーディガンを纏った自身の腕を抱く。 道沿いの街灯が、切れかけているのか、チカチカッと不穏な音をたてて、一瞬だけ消えた。 オレはオレの背中からほんの少しずり落ち始めたコロネロ先輩をもう一度背負い直す。 先輩はオレよりずっと背も高くて体格もガッチリと筋肉質だから、 オレは一瞬浮いた後オレの背にズシンと勢いよく落ちた先輩の身体にオレ自身ももっていかれて後ろの方に倒れそうになった。 「スカルくんは寒くないの?」 「 先輩が薄着だから寒いんですよ。」 オレの方は顔はと言えば今熱を持って熱いと感じる位なのだ。 身体だって心臓が強く脈打ち、血液が激しく循環。体内を熱くさせている。 けれどもその原因は、 先輩、あなたですよ。とオレはいっそ言ってしまいたかった。 「そうかなー?でもあたしは七分袖、スカルくんは半袖だよ?」 「それはそうですけどー……。」 オレがそう口ごもっていると、 先輩はクスクスと笑い始める。 「ごめんごめん、今のは少しイジワルだったね。」 「……少しですか?」 「今のでイジワルなんて言ってたら、リボーンやコロネロはどうなるのよ?」 「あの人たちは酷い人たちです。」 「スカルくん厳しー。」 先輩は嬉々として言う。 でも、ぼんやりと薄暗い街灯に照らされた表情はどこか淋しげで虚ろだとオレは思った。 先輩、オレを見てないですよね。と聞きたくなった瞬間オレはひどく哀しくて辛くて、思わず一度ギュッと強く目を瞑った。 |