オレは生きながらにして死んでいるのかもしれない。 そう思うことがオレには度々ある。 ……というのは、 『こんなのは(もしくはこんなことをするのは)オレじゃないかもしれない。』 というようにオレは思うことがあるからだ。 けれどもそれは、他人から見たオレをオレが捉え直したオレであり、真にオレが造り出したオレではない。 いや、これは正しい表現ではないのか……? オレは他人が捉えるオレも、同時にオレであると認識しているわけなのだから。 しかしオレという存在はオレが造り出すべきものであり、自分がこうありたいと思い、行動するのが先立つものであり、 他人の抱くイメージなんてものは後付けに過ぎない。 だからオレを造るものはオレであるべきだ。 ……そうオレは思うのになぜ、こうまで他人の存在がオレを縛るのか? ……慣れないことを考えたせいで頭がこんがらがった。 とにかくオレが言いたいのはオレという人間の身体は確かに存在するが、オレをオレたらしめる意識は存在しうるのか?ということだ。 もしかしたら……とオレは考える。 オレはその答えが欲しいから、ほかに仕様もないから女たちと身体を交えるのかもしれない。 愛だの恋だのと、そんなことにはほとんど関係なく。 には「優劣をつける恋愛感情」と言われたが、オレにはハナからそんなもの存在しない。 オレがあのとき苛立ったのは恋愛感情がよく理解出来ていないからに過ぎないのだ。 オレはオレを愛する女たちみんなに対して平等である。 多少回数は違うかもしれないが、基本的にあいつが気に入ってるからより多く寝ようなんてオレは思っちゃいない。 しいて が言うように、 のことをオレが特別だとしている理由があるとするならば、それは に似ているということだろうか……? まぁ当然か。 は の妹だ。 そして が妹の扱いを不当に思うのも当然だろう。 たった1人の肉親なのだ。 そして彼女はオレにご執心。らしい。 「カタシロ、だな。」 オレは思わず呟く。 形代。身代わり。 は知っちゃいない。 オレたち2人はお互い好きになり合って、身を重ね合わすのではないのだ。 形代。……形代。 オレは の形代として を、 は死んだ彼氏の形代としてオレを見ているにすぎないのだ。 あのひどくキザで、酒浸りの暴力の好かない心優しいマフィア。 ボンゴレに入ったと同時に髪を黒く染めたあの男。 細身で、身ごなしの軽い少年。 人を殴る感触が怖くて銃に頼り、弾を込めている隙に殺された構成員。 確かにオレはあいつに似ているのかもしれないな。 でも所詮オレと奴は別人。 けれど にとってオレと奴を分けるものは存在するのか? オレは決定的なものがあることを知りながら目を瞑るほかなかった。 なぜならオレにだって形代は必要なのだから。 |