オレは君が想うような人になれているのだろうか……? オレは今まであまりにも迷い過ぎたから、とてもじゃないが自信なんてものは持てなくて、 ただ想い、ただ見詰めることしかできなくて、後を追うことすらままならないまま、今という時を迎えている。 そう。だからオレはいつだって酷い不安に駆られていて、走り続けざるをえないのだ。 先輩、オレに答えをくださいますか……? 「だらしねぇな、コロネロ。」 ふふっと鼻で笑いながらリボーン先輩は言った。 その隣には酔い潰れたコロネロ先輩がいる。 負けず嫌いなのか、それともリボーン先輩にそういう扱いを受けたからかは定かではないが、 コロネロ先輩は誰がどう見てももう無理な状況だというのに「まだまだイケるぜコラ?」とこの期に及んでまだ強がりを言っている。 ……ビールをジョッキで20杯も飲んだら充分だろうとオレは思うのだが。 先輩たちには常識は通用しないだろうことは、これまでの経験からオレはちゃんと学習してきた。 オレが先輩2人の様子を傍観していると突然それまで静観していた 先輩が身を乗り出した。 ボゴォッ 彼女の拳がコロネロ先輩の頭に激突。 当然先輩の意識はブラックアウト……。 「みっともないからやめなさい!リボーンも!」 ったく久しぶりに会うっていうのに……。と 先輩はぶつぶつ呟いた。 リボーン先輩は全く動じずに飲み続けている。 コロネロ先輩がさっきまで飲んでいたジョッキのエンゼルリングがゆるゆると落ちていた。 「スカル。」 帰り際にリボーン先輩がオレを呼ぶ。嫌な予感。 「コロネロを連れて帰れ。」 「嫌ですよ。リボーン先輩が潰したんスからリボーン先輩が後始末して下さい。」 「オレ今からキャシーに会うんだぞ。」 「この状況で!?ってそうじゃなくて!!」 「スカルお前相変わらずツッコミ上手いなー。ほら、ほめてやったから連れて帰れ。」 「何でですか!」 つかそんなことほめられても嬉しくない。 「仕方ない……。公園に棄てるか……。」 「あんたたちはなんて話をしてるの。」 薄情だな。とお手洗いから戻ってきた 先輩はたしなめる様に言った。 「 、オレこの後用事があるからコロネロどうにかしとけ。」 「また女の所?リボーンはさ、もうちょっと自分の身辺整理すべきだとあたしは思うよ。」 「あいつらは愛人だとわかった上でオレと付き合ってるからな。」 「どうだか?強かに狙ってるかもよ?」 先輩と仲良く話すリボーン先輩に嫉妬する一方で、オレはやっぱりこの人には勝てないのかもしれない。と卑屈になる。 「だとしてもオレが愛人に本気になるとでも?」 「リボーンのそういうトコあたしは嫌いだな。」 リボーン先輩は表情を崩さない。けれど冷たい空気が流れる。 「優劣をつける恋愛感情はあまりいいもんじゃないでしょう?」 「オレに説教垂れるな。」 「いつか にも愛想つかされるよ?」 「……放っておけ。」 びゅうっと冷たい夜風が吹いて、 先輩の長い髪が乱れた。 微かにアルコールのにおいも散っていった。 オレは2人の話の中に割っていくこともできず、ただ聞いて、醜い感情を秘めることしかできなくて……。 オレはただただ情けなくなる。 「スカル。」 リボーン先輩が再びオレを呼ぶ。 難しい顔。 「このバカ背負って、 送ってけ。」 時間だ。と呟くように言うと、オレに最早廃人とも言うべきコロネロ先輩を押し付けてからウインクをすると、リボーン先輩は路地に消えて行く。 オレと 先輩は2人残されて呆然と立ち尽くす。 やっぱりオレはリボーン先輩には叶わないのかもしれない。 あの人は何もかもわかった上であんなことを言っているのだろうか……? だとすればオレは……。 「スカルくん。」 先輩は困った顔をしたまま笑おうとする。 先輩、それ笑ってるって言いませんよ。とオレは言ってあげたかったけれど、今のオレにはそれも叶わない。 「帰ろうか……?」 オレは「はい。」としか言えなかった。 自分より幾分大きなコロネロ先輩をどうにか背負う。 先輩はそれを見留めると、オレに気を遣ってか、ゆっくりと歩き始めた。 夜の空気はひどく冷たくて、オレの皮膚を刺した。 |