プロローグ










その日は朝からメイドがティーカップ割ったり、レヴィが集合時間に間に合わなかったり、ベルがティアラ忘れたり、 ルッスーリアが女に見惚れたり、マーモンが報酬額を尋ねなかったりしたから何かおかしいなとは思った。 どれか1つ起こっただけでも不吉だと感じる位の出来事が1度にいくつも……。
だがオレは普段からそういうジンクス的なことに関して無頓着というか、信用してないからどうってことねぇと思っていた。










会議が終わると雲行きが怪しくなった。 どんよりとした嫌な色してやがる空だと思っていたが、どんどん暗くなっていった。
いい気はしない。むしろ苛々する。
任務を言い渡してから時間がたつというのにカス鮫は帰ってこねぇし。 会議に間に合わなかっただけでも赦し難ぇというのに、なんだ、この状況は。
会議の内容はさっぱり頭に入ってこない。






























会議が終わってからしばらくすると、雨が降りだした。バシバシと窓に雨粒が当たる音が煩わしい。
不愉快な気持ちで机にふんぞり返っていると、電話が鳴った。 ディスプレイにはカス鮫の名前があった。オレはすぐさま出る。





「ふざけんなカスが!任務は



「すみません、ボス。あたしです。 です。」





ハァハァという荒い息をしながら電話の向こうにいるのはスクアーロの直属の部下の だった。 オレもよく見知った女だ。





「……どういうことだ。」



「スペルビが……スクアーロが……敵に撃たれ、重体です。」





嗚咽と一緒に雨音が聞こえてくる。





「……任務は?」



「……。敵は……副官のマクミランが今し方始末しました。でもスクアーロが……。」



「今救護班を向かわせる。応急処置位しとけ。」





雨が止む気配はしない。むしろ先程よりずっと強く降り続いている。






























カス鮫はあっけなく死んだ。
救護班が着いたときにはもう手遅れで、 は隣でスクアーロの血と、敵の血とに塗れて泣きじゃくっていたらしい。
オレの部屋にあのカス鮫の代わりに報告書を書くためにやって来た は、目が真っ赤に腫れていて、生気がまるでなかった。





「スペルビは……スクアーロは、あたしを助けてあたしの代わりになったんです。あいつは強いから……



「もう言うな。」





譫言の様に、呟く様にぶつぶつと小声で言うあいつはあまりに痛々しくて、オレは見ていられなかった。










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