「スクアーロッ!!」 久しぶりにスクアーロが学校に顔を出した。 またどこかの剣豪に勝負を挑んできたのだろう。 顔には切り傷がいくつかあった。 痕が残るようなきずではないにしろ、いつ見ていても不安でたまらなくなる。 怪我なんかできることならしてほしくないというのに、スクアーロはいつも 「これ位大したことねぇぞぉ。」だの「戦った男の勲章だぁ。」と、クサいことを言ったりして、あたしの言うことは気にも留めない。 というかそもそも気に留める気がない。 「おぉ、 か。」 久しぶりだというのに、あまりにそっけない態度を取られ、あたしは少し寂しく感じる。 スクアーロはきっと今、また次に戦うべき剣士のことを考えているのだろう。 「今回はどこまで行ってきたの?」 「イギリスだぁ。なかなか手強いジジイだった。」 「……殺したの?」 「殺しちゃいねぇよ!今回は。ただ……」 「今回は!?っていうか”ただ”ってどういうこと……?」 「重傷だな。脇腹えぐれちまった。」 「……何でまたそんなことを淡々と……。」 いつもそうだ。 悪びれる様子もなく、スクアーロは言う。 あたしが殺すのはよしてほしい、と頼む前は殺して回っていたというのだから信じられない。 「まぁオレが無事で帰ってきたんだからよぉ、ちょっとはお前も喜べよ。」 あたしは素直にうん、とは言えなかった。 そんなあたしを見ていなかったのか、スクアーロはにやり、と妖しく笑うと寮の自室へ戻ってしまった。 あたしはそんなスクアーロを見ながら無言で立ち尽くすばかりだった。 あたしはマフィアの世界に生まれたときから身を置いているけれども、いつまでたっても『殺し』だとか『人を傷つける』ことに慣れない。 きっとあたしにはこの世界は向いていないのだろう。 けれどもあたしはあまりにも弱すぎて、この世界から出ることさえできないのだ。 そんな選択肢は与えられないから。 あたしだってそれは彼が無事だったことは嬉しい。 けれどもそれ以上にあたしの見えないところで彼が人を傷つけているということが悲しくて、信じられなくて、その事実があたしの心を少しずつ蝕んでいく。 そして彼が人を傷つけていることを知りながら、彼のことが好きなままでいる自分に疑問を持つばかりで、 それどころか、嫌悪感まであたしの心の中には生まれ始めていた。 |