シチリアに来たのはいいのだが、これまで身体に、精神に、ひどい負担を強いていたせいか、飛 行機での移動疲れも相まってホテルに着くなりスーツケースを乱暴に置くとベッドに倒れ込み、オレはすっかり眠りこけてしまった。 あんまりにも深い眠りについたせいか、夢なんてものは1つも見なかった。 そして今し方目が覚め、ぼんやりとしたままの目をこすりつつカーテンを開けると、ほんの少しばかりではあるけれども、すでに太陽は西に傾き始めていた。 穏やかで真っ青な海が眼前に広がっている。太陽の光を受けて光り、水面には船が何艘か浮かんでいる。 オレが枕元に放置されていたケータイを取り、時刻を確認すると、もうすぐ2時になろうかという時間だった。 昨日オレがここに着いたのが6時を回った位の時間だったから、20時間近く寝ていたことになる。 ……どんだけ寝てるんだ。 寝溜めなんてできないなんてことは科学的にも証明されているのに。もったいない。 と考えた所で、オレはこういう神経質なまでに枠や理屈にこだわるから疲労困憊するんだろうな。と反省した。 20時間寝ていられるほどに疲れているのだ。と楽天的な思考をしようとした所でグウッと腹が鳴った。 そういえばオレは昨日の昼から何も食べていなかったと気付く。 腹をさすると苦しそうにキュルルーと鳴った。 そこでオレは先にベタベタと身体にまとわりついて不快な汗をシャワーで流すか、 それとも情けない音をたてる腹を満たすべきかを天秤にかける。 部屋の暑さに、オレの額からは汗が垂れてきた。 オレはふうっと息をついて、スーツケースから着替えを探し始めた。 |