ある日突然その男性はやって来た。
六道骸さん。
はるばる日本から旅行に来た彼は、とても美しい容姿の男性である。
整った顔立ち。深い藍色の艶やかでさらさらとした髪。右目は血のような赤で左目は髪と同じ深い藍色というオッドアイ。
しかし彼の何が一番素敵かと言うと、丁寧な口調や礼儀のしっかりしているなどの紳士的な所である。
と、あたしは個人的に思っている。










彼がここに現れたとき、あたしは彼の容姿に目を引かれた。おそらく世の中の数多くの女性もあたしと同様だろう。
あたしの場合はそれだけじゃなくて、受付を終えると「ありがとう。」と一言言いながら見せた微笑みまで見せられてしまったのだ。
あたしはそれを見た瞬間、彼、六道さんに恋に落ちてしまった。
自分の顔がひどく熱を持ったということは、いとも簡単に感じることが出来た。






























あの日からもう1週間がたった。
彼はまだまだこの宿にいるつもりらしく、部屋の片付けをしに行っても、いつでもきれいに片付いてはいるのだけれど、 荷物がまとめられた痕跡はなく、むしろ近くの雑貨点などから買ってきたらしい生活用品が増えていっているようですらある。






























さん。」



「はい。何でしょうか?」





六道さんににっこり微笑みかけられながら名前を呼ばれたせいで、あたしはのどから心臓が出てくるんじゃないかと思うほどびっくりどっきりした。





「最近ずっと外食が続いていたので、今日の夜は久し振りに自分で料理がしたいのですが、調理場を貸していただけないでしょうか?」





これが1人で旅行に来た男性のセリフでしょうか?






「あっ、オーナーに聞いてみないとわからないんで掛け合ってみます!」





あたしがそう言うと、六道さんはにっこり笑った。
あたしが恋に落とされてしまった、あの、微笑み。





「よろしくお願いしますね。 さん。」





やだなぁ。また顔が熱くなっちゃったじゃないですか、六道さん。










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