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実は僕、先日千種と犬とケンカをしてしまいました。 あんまりにも腹を立てた僕は、大人気ないなぁと頭の片隅の方で思いながらも、 今まで住んできた黒曜ヘルシーランドの廃墟を捨てて、はるばるここ、地元イタリアに戻って来たのです。 とは言ったものの、僕にはこのイタリアに住むべき家もなく、結局僕はたどり着いた街で一番安い宿に身を置くことになってしまいました。 ホテルを実際に目にするまでは 「あーやだやだ。一体どんなボロ宿なんでしょうか。 せっかくお金を払うというのに、これでヘルシーランドより酷かったら、むしゃくしゃしてることですし、オーナー訴えて賠償金でも取ってやろうか。」 位のことを僕は考えていたのですが、結局それは僕の杞憂に終わってしまいました。 廃墟にすっかり居心地のよさを感じていた僕であったせいか、この安いホテルでも何ら違和感なく僕は住めそうなのです。 ……というのはしょうもない僕の意地で、このホテルはむしろきれいと言えるほどであり、値段が安いのはオーナーの良心だと言えますねえ。 今までよりもずっと快適に過ごせそうだとさえ、僕は思います。 受付の女性はきれいな顔立ちのかわいらしい方で (ネームプレートには、イタリックのローマ字の下に日本語で 、と書かれていました。 珍しいですね、ここはイタリアなのに日本人だ何て。 これから長い間お世話になることになりそうですし、覚えておきましょう。)、 僕が会釈をするとほおをほんのりピンク色に染めてはにかんだ。 それを見た途端に、僕は自然とクロームのことを思い出した。 千種と犬はクロームを大事にしてるでしょうか……? 僕はそのことが心配になったせいか、胸がチクリと痛んだ。 こんなことになるなら、クロームに携帯を買い与えていればよかったですねえ。 2人に僕から話しに行くのはたいへん癪ですが、クロームには何ら罪はないわけですから。 早く声が聞きたいです。 |