度重なる移動でわりと疲れていたオレは、情けないことに空港からホテルまでの移動のために車に乗った途端、酷い睡魔に襲われてしまった。
景色を楽しむ前に意識はブラックアウト……。






























「さぁ、もうそろそろ着きますよ。獄寺さん。」





という、最近オレの専属マネージャーになったばかりの女は、そう言ってオレの肩をゆるゆると優しくゆすった。
オレはそれに反応して、ゆっくりとまぶたを開けた。 途端に燦々と輝く太陽の光がオレの瞳に刺さる。まぶしー。いてー。
そのせいでぱちぱちと目をしばたかせているオレを見ると、 はくすりと笑った。
オレは顔が熱くなったのを感じる。





「な、んだよ。」



「いえ。別に何でもないですよ。」





はそう言うと、にやにやしながら顔をそむけた。
そしてかばんの中から、飾り気はないがシックで洗練されたイメージのつるりとした黒い革の手帳を取り出した。
ぱらぱらと静かな音をたてて は手帳のページをめくる。
アスファルトできれいに舗装された道を、車はなめらかに進んでいく。





「十代目は元気かな。」



「十代目?」



「学生時代からの親友が、今から行くホテルで働いてんだ。」



「へー。」





はにこにこしながら「こういうのを感動の再会って言うんですかね!」とかなんとか言った。





「じゃあ十代目っていうのはあだ名か何かですか?」



「ん、まぁ……そんな感じだな。」





オレは言葉を濁す。
マフィアとかいきなり言ってもどうせ信じられねーだろうこと位わかっているから。





「本名は?」



「沢田綱吉サン。」



「名字はともかく、名前はとてもクラシカルな方ですね。」





徳川の犬将軍……。と呟くように は言って、またもにやついた。
何の想像してるんだ。
オレはすごくツッコミたかったが、なんとも面倒なのであえて何も言わずに無視を決め込んだ。
十代目の待つホテル『ヴィーナス』が見えた。
懐かしいな。
早く十代目に会って色々話したい。





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