犬にチョコレートケーキを1ホール食べられた上に、誤ってとはいえオレに夕飯の酢豚の中にパイナップルを入れられてしまったせいで骸様が大激怒したという、 今思い出しても恐怖の骸様家出事件があった日から早くも1週間が経とうとしている。
いつもと同じ、ちょっとした家出だろうなあ。とオレはたかをくくっていたのだが、さすがに1週間も経つと心配だ。 もしかしたら……というかむしろこの線でほとんど間違いないとオレは思うのだけど、オレたちが謝りに行くまで骸様は帰って来ないつもりなのかもしれない。






























犬はよっぽどこのことがショックだったのか、 あの事件のすぐ後、犬が食べてしまったケーキよりももっと大きなチョコレートケーキを買ってきて、骸様の帰りを待っている。
……もうそのケーキは悪くなってしまっているというのに。
もったいないことに、犬は結局僕らで食べてしまうことを頑なに拒んだ。
オレだって、犬の気持ちがわからないわけでは決してない。
でも、それとこれとは別問題だ。
財布を預かる者の気持ちにもなってほしいものだとオレは思う。






























オレはケーキが異臭を放ち始める前に、犬がトイレに行っている隙を狙って、ケーキを棄てた。
クロームはオレのその行動を見て、「いいの?」とこそっと小さな声で聞いてきた。





「もし骸様がこれを食べてお腹を壊したら、毒でも盛られたのかもしれないと思って、もう戻って来なくなるかもしれない。」



「そうかなぁ?」





じゃあ何て言ってほしかったんだ?





「何2人でコソコソ話してんらよ!」





犬がぴりぴりしながらクロームの方をキッと睨みつけている。
クロームに当たるの、みっともないからやめろよな。
クロームはオレたちと違って今回のことに何の罪もないんだから。
オレは犬に構うのが面倒で「何でもないよ。」と言った。
犬は不審そうな表情でクロームを見た後、オレも睨みつけた。





何だよ。





オレは夕飯の仕度をしなきゃなぁ。と思い、外に出ることにする。
2人には黙ってるけど、オレもみんなのご飯代を削って、骸様にチョコレートを買っているのだ。
犬の気持ち、わからないわけないじゃないか。





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