オレは今、自分の置かれている状況にすごく戸惑っている。 (別に困っているわけでもないし、嫌だと思っているわけでもないことに留意してもらいたい。) きっちりと閉められたカーテンからは燦々と輝く太陽の光が透けて漏れ出ていて、部屋の中はほんのりと明るい。 外からは街を車が走る音やなんかが少しばかり入ってきて、騒々しいわけでもないが、決して静かなわけではなくて、オレは少しばかり気分を落とす。 それだけならいつもの休日と同じだ。 馬車馬の如く働かされた翌日なんて、いくら休日と言えどそんなもんである。 けれど今日は違う。 オレにはそういう習慣はないのにもかかわらず、今のオレは裸でシーツにくるまっている。 そしてそんなオレの隣には、同じく真っ白な肌を晒した 先輩がいる。 穏やかな寝息が聞こえてきて、オレはドキリとする一方、彼女のほんの少し赤みを帯びた柔らかな頬を思わず撫でた。 つるりと肌の上をオレの骨張った指が滑る。 そしてその直後、 先輩の首筋に桃色の痕を見付け、顔がカアッと熱くなった。 夢かと思っていたのだ。 朝目覚めていろんなことがワァッと思い出されて回想されて、そしてそんな幸せなことないだろうって。 けれども今オレの目の前に差し出された現実は、それらの記憶が本物であることを示す類いのものばかりなのだ。 サイレントモードにしっばなしだったケータイがチカチカと青く点滅していることに気付き、オレはひんやりと冷たい角張った機械を手に取る。 着信が二度あったらしく、両方ともついさっき、ほんの10分ほど前のもので、発信してきたのはコロネロ先輩だった。 オレは次に会ったときに何をされるかわかったもんじゃないと思うが速いか、先輩に電話する。 先輩を起こしては悪いと思い、オレはベッドから立ち上がると寝室を出る。 10回ほどコールしたとき、コロネロ先輩は電話に出た。 『何だコラ。』 「それはこっちのセリフですよ。」 オレはそう言って、グラスに水道水を注ぎ、口に入れた。 苦いようなカルキの味が口一杯に広がる。 『いや、大したことじゃねぇんだけどな、オレを送ってったのお前だろ?』 オレはハイ、と弱く言いながら、何か文句をつけられるようなことをしたかどうか記憶を探る。 『だから礼だけは言っておこうと思ってな。』 「……珍しく殊勝な心がけですね。」 『一言余計だコラ。』 そう言ってコロネロ先輩は一瞬黙る。ザァッ少し荒れた音がした。 『そういえばスカル、お前んトコ今誰かいるのか?』 静かな声でつむがれたその言葉にオレは一瞬凍る。 「……何言ってるんですか。オレ今起きたトコですよ。」 オレがそう言うと先輩は変に明るく笑って『オレもだ。』と言った。 「……用事がないようなら切ります。」 オレがそう言ったら、コロネロ先輩は挨拶もなしに電話を切った。 オレは思わず溜息をつく。 コロネロ先輩が電話をしてきたのはきっとお礼なんかのためじゃないのだ。 |