授業が終わって、さぁ帰ろうかぁというときに、最近オレがこっそり気になっていたりする さんが「沢田君、沢田君。」と少し恥ずかしそうに小声で呼んだ。
かわいーなー。
いっつもはきはき元気な感じの さんが少ししおらしくしているのが見慣れない感じで、またそれがかわいくて……ってオレは一体何を考えているんだ。





「えっ何?」



「あっ!もしかして山本君と獄寺君が待ってたりする?それだったらホントごめん。別にたいしたことじゃないんだ。」





慌てて さんは言ったけど、生憎今日のオレは暇。
山本は部活があるから一緒に帰るわけにはいかないし、獄寺君はダイナマイトの仕入れがあるらしい。 ありがとう獄寺君。今日ダイナマイトの仕入れに行ってくれて。





「いや、今日は2人とも用事があるから暇だよ。」



「よかったー……。実は恋愛相談だったりするんだけど、いいかなぁ?」





うわぁーテンション下がるぅー。恋愛相談とか絶対”いい人”位にしか思われてないじゃん。
……いや、わかってるよ? さん、かわいいし、オレなんか眼中にないこと位さぁ。 でも、あー……まぁいいや。話せるだけで幸運っていうか……うん。まぁそんな感じ。 ”いい人”と思われてるなんてむしろありがたいことだよな。うん。





「あっうん……いいよ。でも恋愛相談なのにオレなんかでいいのかなぁ……?」



「ううん。沢田君じゃないと意味ないの。」





あ、っていうことは さんは獄寺君か山本のことが好きなのかなぁ?
オレはオレの前の席の椅子に座ってオレの方をはにかみながら見ている さんを見ながらそんなことを考えた。
色が白い。目がおっきい。特に黒目。まつげが長い。桃色のぷっくりしたくちびる。 全部かわい……ってオレは何を考えているんだ。





「じゃあさ、相談って?」



「あ……うん。実はあたしおんなじクラスに好きな人がいるの。」



「うん。」



「それで告白したいなーなんて思うんだけど、ほら、さっきも言ったけど、好きな人が同じクラスでしょ? だから上手くいけば楽しいかもしれないけど、もしフラれたらすごく気まずいじゃん、お互いに。 それでどうしたらいいかなぁ……って。」





もじもじしながら上目遣いに話す さん。かーわいー。なんかもうオレこれだけで幸せだよ。
ちょっと哀しいのもあるけど。





「うーん、後のことを考えるよりも告白してみたらどうかなぁ?やっぱり想いを伝えられないってすごく後悔することだし。」





パンツ1枚のほぼ全裸の状態で告白したオレは後から後悔したけど。





「そっかぁ……。うん、そうかもしれない。」





そう言うと、考え込むみたいに さんは黙ってしまった。
オレはどうしたらいいのかわかんなくて、黙ってただ さんの姿を眺める。
やっぱりかわいい。いいな、 さんに好かれてるやつ。
オレは さんのことをフるやつの気が知れない、と心から思った。





「沢田君はさ、前に京子に告白したって有名だったけど今でも好き?付き合ってるなんて話聞いたことないけど。」





今オレが最も触れられたくない過去きたー。





「うーん……なんていうか、今はもう違うっていうのかなぁ? 断られてもないけど返事もらってないのってフラれたのと変わらないし今はもう恋愛の好きじゃないってことになるのかなぁ……?」





さんのことが好きだなんて今のオレにはとても言えない。そんなことする位ならこの気持ちをもみ消した方がきっと……。





「そっ……かぁ。」





そう言うと さんはもう1度黙り込んでしまった。
確かに告白する前に失敗談なんて、聞きたくないだろう。
あー、オレって本当にダメツナ。





「あっ、でも さんならきっと成功するよ!うん。オレが保証する。」





顔を上げて困ったように さんは笑った。 小さい声でありがとう。と言ったのが耳に残る。
幸せな響きなのになぜか哀しくて……。





「あたし頑張って告白してみるよ。」



「そっか。」





よかった。と表面だけで言う。
だってオレは……。と言いかけた自分にオレは蓋をした。





「沢田君、あたし沢田君のことが好き。」





幸せな響きはオレの耳を通り過ぎて夕闇に溶けた。残した足跡はオレの胸を高鳴らせた。





「えっ……?も、いっかい言って。」





裏返った声がやけに情けなくて、オレは泣きたかったけど、それは哀しみの涙じゃないはず。



お騒がせ マドンナ
「さ、沢田君のことが、好き、です!」



「お、オレも。」