朝から降っていた雨のせいでスカートはビショビショ。 (だって歩いてたら横を通っていった車が水をかけたんだもん……) あー。テンション下がるなぁ……。 更にテンションが下がることに、登校に当たる時間が雨のピークだったらしく(ツイてなさすぎだ)今は止みかけている。 けれども相変わらずスカートは冷たくて、足に変な重さとベタベタとした感じを与えるし、 靴の中、靴下もビショビショで気持ち悪い。



こんなことなら着替えの靴下持ってくるんだった。



ギュッ、と力を入れるとぐしゅぐしゅと繊維から水分が染み出す。私の不快感も染み出す。






























日本史なんか聞いてられるカァッ!!





さっきからノートは全然進まない。 教室の高い湿度と、さっきから煩く言っている全身を包む不快感がやる気を削ぐから。
かと言って、時間の有効活用法・睡眠学習(……なんか違う)もこんな中じゃできない。
さっきから1人、イライラするばかり。シャーペンをカチカチ鳴らしてばかりだ。










あっ。










シャーペンから目を離すと、まだノートが取れていなかったところが黒板上から消えてなくなっていた。 教員のバカ。カタン、と音を立てて黒板消しを溝の上に置いた。さっそく新しい板書を始める。 他のみんなは束の間の休息に終わりを告げて、ハァッと溜息1つついてから再びノートとの格闘を始めた。










ドロップアウト。










あたしはみんなの様にもうやる気なんて起きない。 机に突っ伏してみる。というか寝られそうでは全くないけれど、とりあえず姿勢だけは寝てみる、って感じだ。 もしかしたら眠くなってくれるかもしれないし。(……うん。でもやっぱ眠れそうにないや。)










突っ伏しついでに右隣の山本を見ると、ウトウトしていて左手に頭を乗せている。 ……っていうかぶっちゃけこれはウトウトどころか爆睡だな。 あたしは思わずクスリ、と笑ってしまった。










あっ。










カクン、と彼の頭は左手から滑り落ちた。 肘も机から落ちて、ついでにファスナーが開けっ放し全開になっていた筆箱と、 左半分だけが完璧に書けていて、寝始めたせいで右側のページは真っ白なノートも落ちた。 バラバラとペンが散らばる。 ……と言っても彼の筆箱の中身はシンプルで、ボールペン1本(赤・青・黒の揃ってる見た目より機能性重視のアレ) と消しゴム、修正液、定規位しか出てこなかった。 (ちなみに彼は右手にシャーペンを握り締めていて放さなかった)
悪友たちに笑われながら彼は筆箱と飛び出た中身を拾う。 あたしは仕方なしにノートを拾ってあげる。 スライドしながら落ちたのだろうか、ノートは運良く今日のページが広げられたままだ。










あっ。










あたしが見つけたのは、ノートの端に 相合傘





あたしたち2人の名前が入ってる。 、山本武ってね。




















「ねぇ、今日前半の授業寝てたんだ。ノート、後で貸してくれない?」



「いいけど後半、知ってると思うけど俺寝てたぜ?」



「いいのいいの。寝てたの前半だけだし大丈夫。
 あっ、ついでだから返す時に後半の分のノート、あたしので写しなよ。」



「おっ、マジで!?サンキューな。」










さっき秘密で書いたんだ。
自分のノートにも相合傘。
(もちろんこれもあたしたちの名前でね)