「あんな女のどこがいいのよ!?」





学校で、というより教室で周りの目もはばからずに大声で怒鳴り散らすあたし。
当然だけれど周りはドンびき。
さん恐ーい、なんていうクラスの馬鹿な女子の声も聞こえてくる。
お前ら会話の内容聞こえてるのに武の味方かよ…!!
思わず叫びたくなる。
被害者はあたしだ。
それなのになぜ浮気をした武をみんなして庇う……?
やり方がまずかったのかもしれない。





「だからそれは誤解だって。
 委員会の後だったから残った仕事を片付けていただけなんだってば。」





必死の弁解をする彼。



イイワケナンテモウキキタクナイ



頭が痛い。
事実を認めたくないからだろう。
自分を哀れだ何て思いたくないけれど片隅で思ってしまう自分がいる。





「言い訳なんていらないわ。あたしの質問に答えて。」





あたしがそう言うと思った通り口をつぐんだ彼。





やっぱり言えないんじゃない。





心の中で毒づく。
なんて醜いんだろう……?




















あたしだって本当はこんなことしたいわけじゃない。
ただアンタが本当にあたしが言って欲しいことを言ってくれないから、結果としてこうなった。
ただそれだけのこと。










そんな風に全てを彼に負わすことが出来たならどんなにか楽だろうか……?
やり方がまずかったのもわかってるから、そんなこと言えない。
彼に少しでも歩み寄れなかった自分だって悪いんだ。
崩壊するあたしたちみたいな関係において どちらか片方だけ罪があるなんてことあり得ないのだから。




















「もういいわ。別れようよ、武。」





教室中が一気に静まり返る。
彼の表情も固くなる。 周りの奴らは下賎な目であたしたちを見る。





ミセモノナンカジャナイ





告げてしまったのだ。さっさと終わらせてしまいたい。





「だいたいさぁ、今までだって付き合ってる、なんて言える状態じゃなかったじゃない。
 武っていつもいつも野球かツナかのどっちかだったよ。
 あたし、もう疲れちゃったよ。武を追いかけるの。」





あっ。
少し涙声になった。
あたしって本当に演技へたくそだな。










痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い





頭が痛い。胸が痛い。





あぁ。
あたし、今これまでのなかで1番武のこと好きだって自覚している。





「だからね、バイバイ。さよなら。」










言ってから涙が溢れてきそうになった。
こんなことしてるクセに泣き出しちゃったりなんかしたらかっこ悪いから、 あたしは全力で教室を飛び出した。
廊下を歩いてた奴らが次々と振り返る。
酷い顔をしていたかもしれない。




















本当は武から「待てよ」とか「ゴメン」っていう言葉、期待してたんだけどな…。
そんな言葉はどこからも聞こえてこなかった。






























「いいのかよ、山本。」





珍しく獄寺から山本へ話を振る。
こういう日はたとえ拳銃の所持が禁止されている日本でだって、銃声が聞こえてくるだろう。
ゆらり……。
彼のタバコから出た煙は消えていった。





「いいんだ、別に。
 俺のところにいるよりも、あいつは他の誰かのところにいるほうがきっと幸せなんだ……。」





そう言うと彼は隣の男のタバコの箱を取り上げると1本取り出した。
何も言わず獄寺はライターをポケットから出して渡すと呟いた。





「そんなもんか…?」





目線の先には涙を溢す男。
煙は風に揺られて消えていった。










崩壊 Amplifier










誰よりも別れを拒んでいたのは実は彼だったのかもしれない。