「あっ!スクアーロ。さっきボスからペアでの任務があるって言われたんだけど!」



「あぁわかったぞぉ。」



「じゃあ後で詳しいことはメールするから!」



「わかった。」




















「……つってもなぁ。これ、ほんとに任務なのかぁ……?」





そう呟いてからオレは隣の を見ながら溜息をついた。いつもの服と違うせいか、少しどきっとしたっていうことはこいつにはもちろん内緒だ。





「はい。これ、チケットだから。」





にこにこしながら はオレにチケットを渡す。ますますオレは不安になって、思わずさっきからずっと気になっていたことを口に出してしまった。





「なぁ……これ、ホントに任務なのかぁ!?」



「……。」



「(……嫌な予感がするぞぉ。)なぁ。」



「……ごめん!!」



「……ってことは……?」



「うん、実は任務じゃないの……。」





やっぱりなぁとオレが呟くと、 はもう1度ごめんと言った。





「嘘をついたのも勝手に休み取ったのも謝る。でも最近ずっとデートしてなかったから……。」





寂しかったの……。といじらしく顔を伏せながら言う に負けてオレは遊園地のゲートをくぐった。




















「のぁぁぁぁぁっ!!」



「ふぎぃぃぃぃっ!!」



「ぎゃぁぁぁぁっ!!」




















オレは の要求をのんでしまったことを激しく後悔した。










「あー楽しかった!」



「アレのどこが楽しかったんだぁ!!」



「すっごくスリルあるじゃん♪っていうかスクアーロすごい悲鳴上げてたよね。」





くすくす笑いながら は「次はどのジェットコースターにしよっか?」なんて言ってオレの手を引いた。
オレは慣れないもんに乗ったせいでふらふら。 次も何かおそろしいものに乗らなきゃならないかと思うと正直憂鬱だ。 でももし にそんなこと告げれば「スクアーロの弱虫」などと言われかねないので言えない。
自分の見栄をかっ切ってしまいたいとさえ思う。





「ねぇ次はこれに乗ろう。」





そう言った の指差す方を見ると今までの恐ろしいジェットコースターじゃなくて





「……コーヒーカップ?」



「これならきっとスクアーロも大丈夫。」





にこっと笑ってから はオレを強く引っ張った。
の背後ではカップの形をしたパステルカラーの乗り物がたくさんくるくるとゆるやかに回っている。





「(確かにこれならオレにもいけそうだぁ。)」





は考えなしで、直情径行ってわけじゃなく、結構オレのことも考えてくれていると思うと自然に笑えた。




















かに見えた。





「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」



「どうよっ!?スクアーロ!スリル満点で楽しいでしょ?」





全力でコーヒーカップを回す
髪がなびくとかそんなレベルじゃなくなる位の速度で回している。 こんなとこでヴァリアークオリティー使ってどうするんだぁっ!?





「う゛ぉい!!これさっきまでほかのやつらがやってたのと違う乗り物になってんだろうがぁっ!!」



「こっちの方がいいに決まってるじゃない!!」





そう言うと は更にスピードを上げた。





「ってヴォォォォォイ!!オレの話を聞けぇっ!!」





そんなオレの叫びも虚しく、 は高速でコーヒーカップを回し続けた。










、お、お前……いい加減にしねぇとオレ帰るぞぉ!!」





酔ったせいでぐるぐるしている頭を押さえながらオレは言った。
はあっけらかんと「冗談だってばー」と言って笑う。
一体今の会話のどこに笑う所があるというのだ。
大体もう空は薄暗い色を帯びているというのに、なぜオレはこんな所で乗り物酔いなんてしてるのだ。





「帰りてぇ……。」





そう呟いたかとオレを「次で最後にするから」と言って はオレをなだめるような口調で話しながら何の乗り物かに引っ張っていく。
嘘臭さばかりあるもんだからオレはすごく不安な気分だ。
……みっともねぇ。





「ほら、今度こそビビりのスクアーロでも大丈夫でしょ!」



「ビビりじゃねぇ!」





反論してから顔を上げると目の前のアトラクションは観覧車。確かに怖くない。
が、正直……これに乗るののどこが楽しいのかわからん。 (というか と何かに乗る、ということそのものに対してオレは恐怖を感じつつある。)





、お前これに乗るのか?」



「スクアーロ……。もしかして今更だけど高所恐怖症?」



「違ぇぞぉ!!」





じゃあいいでしょ?と言うと、 は容赦なくオレを引っ張り込んだ。
ゆっくりと上昇する箱の中でオレは にどこが楽しいんだぁ?と聞く。





「だってロマンチックっていうかなんていうか……景色もきれいじゃない。それに恋人同士で乗るのって定番でしょ?」





「あっ……そう。」





あーもー恥ずかしいなぁ!と言ってからごまかすみたいに窓の外を指差して、 「夕日もきれいだし、反対側は星だって出始めてるよ!」 と は無邪気にオレに笑いかけた。
確かに綺麗だ。
でもそれは空だとかの背景なんかじゃなくて、今まさにオレの目の前にある風景が、ということだ。
オレは の言った恋人同士、という言葉がまだ幸せを含ませながら頭の中で響いていることにやっと気付いた。





「スクアーロ。」



「あっ?」



「今日は付き合わせちゃって悪かったね。」





たまの休日だったのに……と はしおらしい表情で言った。



「はぁっ?何言ってんだ今更よぉ。」



「でも。」



「いいっつってんだろぉ!素直に喜んどけぇ!」





そうだオレは結局どんなイヤなアトラクションに乗らされたって何だって、 が笑ってられればそれでいいってどっかで思ってた。





「ありがとう。」





その言葉は笑顔と一緒に心に染みた。





「そのかわり今度の休みにはオレが連れ回すからな。」



「楽しみにしてる。」





覚悟しとけ。










仕返しの言葉は"愛してる"










遅くなって申し訳ありませんでした。
代わりと言ってはなんですが、リクエストして下さった陽菜様はお持ち帰り可です。