あー路地に入られたっ!!と思ったときにはもう遅くて、あたしはすっかりターゲットを見失ってしまった。 街頭もなくて頼りになる明かりは月明かり位。 ……いや、ぶっちゃけこれもそこまで頼りにならないんだけど。 まぁないよりはマシってことで。 まぁじっくり狩るかぁって思ってたらマナーモード(バイブ)に設定していたケータイがぶるぶると振動した。 誰だこんな時間に電話そしてくるなんて非常識な奴めっ!!と思って電話を取ると、 何のことはない只今一緒に仕事中の最近絶好調な相方の だった。 「もしもし。」 『あたしだけど、こっちは狩れたけどそっちはどう?』 「今ちょうど見失ったとこ。じっくり狩るわ。」 『手伝おうか?』 「いいよ。お金もらうからにはその分の働きはしなきゃ。」 あはは らしいわねー、と は笑うと、それじゃあ打ち合わせた通りのところで落ち合いましょう、と言って電話を切った。 あらら、これはそんなにゆっくりもしてられないなぁと思って、 あたしはとりあえず先程ターゲットにつけた傷からの血によって遺されたであろう血痕を辿ることにした。 血痕を辿った先にいたのはもうすでに止めを刺されたターゲットと、見覚えのある銀の長髪の男だった。 腕の立つ男。 ぎらぎらと夜の闇に光る目が恐ろしい、男。 でも、薄い月明かりに照らされた姿は美しくて、思わず、見とれてしまった。 「う゛お゛ぉい!そこにいる奴。何者だ。姿を現せ。出てこなけりゃかっ切るぞお゛ぉ!!」 男は件を抜くとあたしの方をぎろりと睨んだ。 そこでくたばってる男を殺すように依頼された殺し屋よ、とだけ言ってからあたしは仕方なく陰から出る。 「何だ。 、お前かぁ。この下手くそな殺しをしたのは。おかげで血が付いちまったじゃねぇかぁ。」 カチンときた。いくらあたしでもそこまで単刀直入に言われると腹が立つ。 「血が付いたのはあんたの技量不足もあるでしょ!! それにスクアーロこそあたしの獲物取らないでくれます? これだけ傷ついてりゃいくらあんたでも他人の獲物だってわかるでしょ。」 「こういうのは逃がした奴が悪いに決まってるだろうがぁ。 大体オレも好きでこんなしょぼい奴殺してるんじゃねぇ。依頼されてやってんだぞぉ。」 あたしは上手く言い返す言葉が見当たらなくて、しばらく睨み合った。 この後どうしようかと考えているとスクアーロが口を開いてくれた。 「それで結局こいつどうすんだぁ。ターゲットが被ってたんだろ?」 「でもだからってどうすんのよ。きっと依頼主は別人でしょうし……。」 「まぁいい。 、てめぇにくれてやるよ。 別にオレは首を取ってくるような指示は出ていなかったし、死んでりゃそれで済む。」 「何よ!別にあんたに譲られるほどあたしは落ちぶれてなんかいないわ!!」 恩着せがましい言い方にあたしはまたもカチンときてしまい、せっかくの申し出だと言うのに断ってしまう。 馬鹿。 言ってしまってから自分を罵る。 「わかった。うるせぇ奴だなぁ。」 血が付いた手のままで彼は綺麗な銀髪を弄んだ。 「じゃあこうしろ。てめぇはこいつの首を持って帰れ。」 「それじゃあさっきと言ってること同じでしょ。」 「話を最後まで聞かねぇとかっ切るぞぉ。」 ギロリ、と睨まれてあたしは動けなくなる。うっ、と間抜けな声まで上げてしまった。 (まるで蛇に睨まれた蛙だ。みっともない。) 「がこいつの首を持って帰る。それは変えねぇ。 ただし、その代わりオレに報酬の一部をよこせ。」 「……それならいいけど要求額はどれだけ?」 「それはてめぇの両親に任せる。 それにオレに言わせりゃこいつはオレが見つけたときにはもうすでに半死だ。 放っておいたところで野垂れ死んだに決まってる。 こんなの見つけたくらいで金を取る気にもならねぇ。」 「……わかったわ。あんなの言う通りにしとく。」 あたしがそう言うと彼は自分の連絡先を書いた紙をあたしに寄越した。 「連絡ちゃんと寄越せよぉ。」 「言われなくてもわかってるわ!!」 最後に悪態をつくとあたしたちは2人揃って闇にまぎれた。 それはきっと 予感 にも似て 渡された紙を見るとご丁寧に電話番号だけじゃなくて、メールアドレスまで載せてあった。 |