オレはネコが好きだ。飼っているから、というのもある。 けれども飼うというのはある程度好きでなければ飼うことなどなかなか出来ないわけで、 オレも例外でなく、ネコを飼う以前からネコが好きだった。 まるっこいフォルム。 ふわふわの毛並み。 ぷにぷにの肉球。 見た目だけじゃない。 自分の気分の乗ったときだけ布団に入ってきたり一緒に遊んだりするっていうスタンスも好き。あの気ままな感じはオレにはないものを感じる。 オレは無意識のうちに他人が望むことをやろうとしてしまう媚びた自分に嫌気がさしているのかもしれない。 そして自分のやりたいように出来るネコを自分の理想の姿として重ね合わせているのかもしれない。 甘いにおいがして目覚めると、シャランという涼やかな鈴の音がして、ヨルが部屋に入ってきた。 (ヨルは が夜中にアパートの前に捨てられていた所を見付けて飼い始めたネコだ。ヨルという名前の通り真っ黒なネコ。 ガリガリだった身体は にたくさんメシをもらっているせいかちょっとばかりふくふくしている。) ヨルはソファーに寝そべっていたオレの上にひょいと乗ると身体を丸めた。 オレはヨルを持ち上げると身体を起こす。ヨルは嫌そうな顔をするがオレはかまわない。抱えて狭い額の辺りを撫でた。ごろろ。と声を出す。 「スカル、起きたの?」 「うん、今さっきな。」 はキッチンからオレに声をかけた。 「ケーキ焼いたんだけどお茶にしない?」 「いいね。」 オレがそう答えると はキッチンから顔を出し、にっこり笑ってティーセットを準備し始める。 「あら、ヨル帰ってたの?」 ヨルはにゃーと返事をする。 ネコは人間の言葉をどのくらい理解しているのだろうか……? オレが疑問に思った所で、 はどうやらミルクティーを用意しているらしく、ケーキとはまた別の甘いにおいが部屋に立ち込めた。 ヨルが過剰に反応する。 「今日はシフォンケーキのバニラアイス添えね。」 は得意気に言ってリビングのテーブルにプレートを並べた。 ヨルはオレの腕の中からするりと脱け出すと、ティーセットを取りにキッチンに向かった について行き、にゃお。と何かを訴えるように鳴いた。 「そっか、ヨルだってお茶したいよね。」 そう言うとティーセットを机に並べた後、 はヨルの餌を入れる器にミルクを注いだ。 オレはミルクを舐めるヨルと、それを幸せそうに眺める を見つめると甘やかでやわらかな気持ちになった。 |