雨というのがあたしはあまり好きではない。 何だか外に出掛けるのが億劫に感じられるから。 第一、傘をささなきゃいけないっていうのがもうあたしとしては嫌で嫌で仕方がない。
本当は濡れながら歩いたって、家への帰路位なら平気なほど。 (まぁでも世間の目を気にして、なかなか雨の中傘を持たないで歩くなんてこと、やらないけれど。)




















「……だから昨日仕事に出なかったのか?」



「……。」





咎める様な声色で(いや、実際にあたしは咎められているわけだけど)スカル様は言うと、 あたしが来る前から飲んでいたらしい紅茶を口にした。
それはあたしが来たばかりのときは湯気がたっていたはずだったのに、冷えてしまったのかもう湯気は見えなかった。
スカル様の強い口調よりもあたしは昨日から降り続いている雨の方がずっと気になる。
本当は、ただ、答えたくなかっただけだ。





、自分から言わないならオレから言うぞ?」



「僭越ながら言わせて頂きますが、スカル様が私などの何を知っていらっしゃるというのですか?」



「なめるな。これでも軍師だぞ。情報掴むのが下手でどうする。 それにお前はオレの大事な部下だ。 部下を知らない様じゃこんな職務まらないだろう。」





珍しく、荒っぽい動作でスカル様は言った。カップが激しい音を立てて置かれる。 あたしはこんなスカル様を見たことがなかったから、少し驚いた。





「失礼しました。」



「それで……オレが聞いてもいいのか?」



「スカル様が何をおっしゃりたいのかが私にはわかりかねます。」





嘘だ。今確かに心臓が刺されたみたいに激しく痛んで、息だって苦しかったじゃないか。
あたしはスカル様を見ていられなくて、視線を外した。





「同隊のマクミランに捨てられたろ?」



「……。」





吐きそうだ。





「私情を仕事に持ち込むな。」



「すみません。」





あたしは逃げ出したくて逃げ出したくて仕方がない。
外はサーッという霧の様な、あたしの大嫌いな雨が降っているけれど。





「……いや、謝らなくていい。オレだってわかってるんだ。 こんなこと……割り切ろうとしても上手くいかないことがあるってこと位……。」





スカル様はそう言い終えるとあたしの目の前にある紙(昨日の無断欠勤を責めるための物だ、)を睨み付けた。





「とりあえず嘘でもいいから『すいません』って書いちまえ。お前が私情で欠勤したのは事実なんだから。後はオレが何とか上に言っておく。」





スカル様はそう言うと、冷えるな……と呟いて席を立った。





「お前も茶飲むか?」



「えっ、いや



「遠慮すんな。まだ話は終わっていない。それに……オレがお前を呼び出したんだから。」





あたしが答えられずにいると、スカル様はアールグレイでいいよな?と言ってキッチンへと消えてしまった。










雨は静かな音をたてて降り続いている。
先程よりずっと和らいだとはいえ、あたしはまだ外に出られそうにない。










涙雨