「バジル。」

「何ですか、 殿。」

「あたし、好きな人ができたかもしれない。」



心臓が喉から出てくるんじゃないかと思うほど、大きく1回脈打った。 後遺症なのか、胸にはまだ痛みが残っている。



「それはまた……えらく突然、ですね。」

「恋は突然訪れるものなんじゃないの……?」

「拙者の場合、恋心というものは長い時間を掛けて少しずつ培われていきます。」

「へぇ……。でも言われてみるとバジルはそんな感じかも。」



そうですか?と聞き返すと、 殿は拙者のほうを向きながらどこか遠くを見ていた。
どくん、ともう1度吐き気が襲う。



「バジルは……応援……してくれる、よね?」



優しい嘘



「はい。もちろん……です、よ。」



上手く間を埋めて、答えられただろうか?と考えたが、記憶が抜けていて拙者にはわからない。