何も言わずに剣介は突然あたしから鞄を取った。 こういうトコが変に紳士で、あたしはドキリとさせられる。
嫌だなぁー。これ以上好きになれないと思ってたのになぁー……。
あたしと並走しているカラカラと剣介の自転車のタイヤがたてる音がなぜか温かく感じる。 剣介がたまに蹴り上げる路上の石がたてるじゃりり……という音さえも、だ。あったかい。
あたしはあまりの温かさに自分の中身だけが酷く冷たいような気になって、温めようと剣介の腕を引き寄せた。
剣介が止まる。あたしももちろん止まった。少し背伸びした。



、」



優しい、剣介の声が耳からとろけるみたいにして入ってきた。





距離が縮まって






日記の小話のリサイクル。加筆修正。