彼はあたしとは全然違う感性の持ち主らしいということや、 棲んでいる世界のようなモノが違うということには初めから気付いていたし、 だからこそ彼に惹かれたというのも事実だ。だけど……。



そう、だけど。



だけどその溝が思っていたよりもずっと深くて、恋する力だけで埋めきれるかどうか不確定。
だいたい、現実がいつだって受け入れられるかと問われるてもそうじゃないでしょう……?






























「今日はなんだか元気がありませんね、 さん。」





河川敷に2人並んで座って黙っていると、骸はその沈黙を突然破った。





「ちょっと悩み事があってね。」



さんらしくないことこの上ないですね。」



「……失礼ね。あたしだって悩み事位あるよ。」



「へぇー……。それは一体何ですか?」





心なしか楽しげに言った骸にあたしは軽く苛立ちを覚えた。
むくむくと復讐心というか仕返しを促すような感情が芽を出す。





「そうね……。例えば彼氏がある日突然小学生の姿になってたとか?」


「……これは事故です。」



「そうね……ほかにはそんな見掛け小学生な彼氏にセックス強要されるとか?」



「……でも さんかん



「それ以上言ったらあたし帰る。」



「そうすれば、僕、泣きますよ?」



「小学生泣かせたと思われるのと、危険なショタコン娘と思われるのとどっちだと思う?」





あたしが立ち上がってそう問うと、骸は測りかねますね、と他人事っぽく言うと川に石を投げ込んだ。
ぼちゃん、という音が虚しく響く。
小学生・みー君の姿を借りた骸は見た目と纏う雰囲気の差異が不自然でなんとも言い難いものがある。
ちなみにあえて言うなら、今の彼の表情はしかめっ面。
そうだ。確かにあたしだってショックを受けたけれど、当の本人だってショックだったにちがいない。
第一骸はナルシストとでも言うべき人種の人間なのだ。
自分の身体を手放すことはどんなに辛かったろう……?
あたしはもう1度座る。





「帰らないんですか?」



「まぁほんの気の迷いみたいなものよ。」



「それはよかった。」



「それより、骸こそいいの?一応姿小学生なんだしさ。 このご時勢、親とか心配するんじゃない?門限は?」





ちなみに隣町では並盛中?だったかが連続で暴行を受けた事件があった。恐ろしいことだ。





「……本当はあんなトコなんて帰りたくないんですよ。」



「あんなトコ……?あぁ、ホストファミリー?何で?」



「家族なんて空々しいもの、堪えられません。」



「空々しい……かぁ。」





隣の坊やは目に涙を溜めている。子どもは涙腺が緩い、ってことにして見逃しといてやる。





HIDEOUS
君は仲間さえも信じないような振り装っているけど、あたしは知ってるよ。
君が誰よりも他人からの愛を欲していて、そして誰よりも愛したいって願ってることを。