君と私。
2人いるのに独りきり。










独恋 (かたこい)










骸さんはたとえ周りに他人がいたとしても、 自分の中から存在を抹消してしまっているんじゃないか、って彼を見ていると私はよく思う。
消されないのはいつも仲良し、同じく転校生の柿本君と城島君の2人だけ。
だから私は彼にとってクラスメイトAであるのかさえも自信なんて、ない。




















淋しいとは思わないのだろうか……?
こんなにも人はいるのに、たった3人だけの世界だなんて……。




















淋しいなんて思っているのは私だ。





どんなに彼のことを想っていようと、 それは彼にとっては何も意味など成さない。 関係などないのだ。
なぜなら彼の世界に私、 なんていう人間は存在しないから。






























当番の彼。居残りの私。
正確には居残りというのは口実にしかすぎなくって、 せめて彼を見ていたいという儚くて淡い想いが私の中にくすぶっているからだ。
虚しいと言ってもいい。





なぜかって?





だって報われないってエネルギーを無駄に消費してしまうから。
想うのにも、傷つくのにも、癒すのにも、忘れることにさえ……。
それでも私は前に進めない。
だって報われないから。
まだこんなにも
恋の欠片 を私はまだ信じてる。




















さん、僕はもうこれで仕事が終わったので帰りますね。
 戸締りだけ、頼みましたよ。」





それだけ言うと、彼はピシャリと閉め、 ドアの向こうへとするりと消えていった。
もちろん振り返るなんてこともなく。
振り返ってくれることを、ほんのわずかでも期待した自分を後悔する。
期待なんてハナからしなければ傷つくことなんてないとわかっているのに。
なんて強欲な女だろうか。
なんて嘘吐きな女だろうか。
見られるだけでいいなんて言いながら、想いながら、 まだ彼のことを欲している。望んでいる。










なんて莫迦で愚かな女だろうか。




















残された私。
外はもう真っ暗闇に閉ざされていた。
都会の淀んだ空には星なんてものは見えない。
見えるのはまるで私を嘲笑うかのような傾いた三日月ただ1つ。
それさえも厚い雲に隠されようとしている。




















それはもしかして私に光を そして彼を 見せないためだったりなんかしたりして……。