いくら考えようとも答えなんて出るはずがない事象というのは、世の中にはそれこそ数え切れないほどあるだろう。 そういうどうしようもないことを無駄に考えてみる(むしろ妄想してみる)という途方もなくて、くだらない作業が、あたしはなぜだかとても好きだ。




















「非常に非生産的な行いですね。 さんらしくない……。」



「そう?あたしってそんなに生産的な行動しかしないようなつまらない人間だなんて骸に思われてたの?」



「そういうことになりますね。」





骸はそう言うとチョコレートを一粒口に運んだ。流れる様な一連の動きをあたしは目で追った。





「心外ね。まぁいいけど。でもさ、答えがないものを求めるって少しロマンを感じない?」



「愛だの恋だのとかの類いの話なら今は遠慮しておきます。これ以上甘い物は結構です。」



「違うわ。っていうか甘い物は結構って……チョコレート食べてる奴がよく言うわね。日本男子の甘党増加の原因は骸みたいな奴が増えたからだわ。」



「……話をすり替えないで下さい。それで、愛だの恋だのの類でないなら何について考えているんです?」





骸こそ、とあたしは思ったけれど、 これ以上骸とやりあっても、口が達者な骸と感情的になり過ぎて自爆してしまうあたしとじゃ勝負が見えているから、やめた。





「例えばそうね……精神の在処とか?」



んー、と骸は唸った後に考えるみたいに手を口元に持っていった。



「それはおもしろそうですね。つまり さんは精神や心には脳の活動以外の捉え方があると考えているということですか?」



「そうよ。」



「へぇ……。ではどのように考えるんですか?」



「えーっとね、精神と肉体はあたしたちには見えない糸で繋がっているの。 それでね、肉体は地上にあるんだけど精神はもっと別な場所……あたしたちの目の届かない所にあるの。」



「それはまた……突拍子もない話ですね。」





骸は少し楽しそうに口元を緩めた。
あたしは密かにこの顔が骸の見せる表情で1番きれいな表情だと思っているので、少し得した気分になった。





「まだ続きがあるの。それでね、肉体が活動しているのと同様に、精神も好き勝手行動しているの。 だから人間同士の繋がりはくっついたり離れたりするの。 ほら、例えば生活範囲が同じでも話さない人っているでしょう? あれは実は肉体が近くても精神が離れているからなの。」



「実におもしろい理屈ですね。では僕たちは肉体も精神も近いということでしょうか?」



「そうね。」



さんの目に見えない部分も近くにある……か。」



「ご不満?」



「いえ、幸福なだけです。」





そう言いながら骸はあたしの1番好きな顔で「 さんの言った通りだといいですね。」と言った。










精神の在処についての


ディスカッション











あたしとしては君が同意してくれて、なおかつ、あたしの近くに在ることを幸福に思ってくれるというただそれだけで満ち足りています。