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何年前からマフィアの世界に身を浸し続けているのかわからなくなってきた。 最近ではたまに殺すことが日常化してしまっている自分に嫌悪している。 悪い兆候だ。そろそろ潮時、ということなのかもしれないとも思う。 オレは命のやり取りにスリリングな感覚を最早抱けなくなった。 そういうことだろう。 「 。」 「何?」 今手が離せない。と言うと、 はハンバーグの種をオレに見せた。 「じゃあ、後でいい。」 「ごめんねー。」 そう言うと は楕円形に肉を整え始めた。 オレは の『手が離せない』というワードで、最近やっと手が離れ始めた教え子・ツナを思い起こす。 家光の跡を継ぐアイツは今年イタリアの大学を受験する。 こればっかりはオレがずっとついていても仕方ないから、質問はまとめて受けるという形で家庭教師をしている。 今ではツナの家には1週間に2,3回行くか行かないか程度。 専らオレは の家に居座っている。 (それに、ツナには獄寺をつけているから大方大丈夫だろう?) ジューという音とともにハンバーグの焼けるいい薫りが部屋に漂う。 「腹減ったな……。」 オレはこの世間一般でいう日常に稀少さを感じる。 を見つめる。 この色白の肌が白い女と戦場で逢ったなんて言っても誰も信じないだろうとオレは思った。 はこういう風景の方が似合う女だ。間違いなく。 だってあんなにも哀しそうに拳銃を持つ女をオレは戦場で見たことがない。 みな、大なり小なり命を賭すことに対する興奮が表情に滲むものなのだ。 それなのに にはそういう雰囲気を、オレは微塵も感じることができなかった。 「リボーン、ご飯出来たよ。」 「あぁ。」 オレは食事の用意がきちんと整った席につく。 「さっきあたしのこと呼んでたけどどうしたの?」 はそう言いながらワインのボトルをオレに手渡した。 女がワインのボトルを開けてはいけないなんてマナー、家では関係ないとオレには思えるのだが。 しかしオレはそんな風に思いながらも黙ってそれに応じる。 曇り1つないグラスの中に赤紫の液体が満ちていく。 血だ。 オレは半ば反射のようにそれを連想する。 「 。」 「だから何。」 「ツナが合格したらオレはイタリアに戻ることになるが、 もどうだ?」 何でこんなことこんなタイミングで? |