『風紀委員長こと雲雀恭弥を黙らせることができるのは?』





こう並中生100人にアンケートをとれば100人がこう答えるはず。











と。










サディスティック ハニー




















「あっ、あの会ちょ…… 先輩!!」





日差しが心地よい昼休み。
ブラブラと特に用事もないクセに廊下を歩いている所と、 半べそをかきながらやってきたのは1年生。 傷があるあたりどうせまたヒバリにやられたのだろう。 まだ血がにじんでいる。
実際にそうだったとしても、 顔が変形しなかっただけマシかな……なんて思っているのはやっぱりダメかしら?





「今日はどこでやってるの?
 昨日応接室血をキレイに拭いたばっかだし、いくら恭弥でも流石に汚したくないだろうしねー、やっぱ屋上かな?」





『血をキレイに拭いたばっか』と聞いた瞬間、少年は一気に青ざめた。
あたしなんて日常茶飯事……もう慣れっ子だというのに情けない。
あたしは彼がかろうじてうなずいた所を確認するとすぐに走り出した。
……が、すぐに立ち止まる。





「あっ、今やられてるのは君の友達だよね?」





コクコクとうなずいたのを確認するとあたしはもう1度走り出した。
ちょっと遅れてついてくる彼。





「いいよいいよ、君の友達の後始末はあたしが処理しとくから!
 それより保健室に行ってあの男しか看ないダメ保健医を説得しといて。」





「はっ、はい!」





慌てて逆方向へと走り出した彼。
いかにも気弱そうな彼のどこが恭弥は気に入らなかったんだろうか……? またいつものように気まぐれかもしれない。
無意味な憶測。




















バン!!と大きな音を立てて戸を開けると目に入ってきた光景は予想通りの ……というよりはむしろ見慣れた光景と言った方が正確。
頭の中で思い描いていたとはいえ、流石に本当に目にするのは不快。
光景ばかりではない。
耳に入ってくる、グスグスという殴られている子の鼻をすする音は本当に聞き苦しい。
……何やってんだか、恭弥は。
あたしはこんな嫌で無益なボランティアなんてさっさと済ましてしまいたい、と心から思う。





「ひーばーりー。雲雀恭弥!」



「そんな大声なんて出さなくても聞こえてる。」





不機嫌そうな彼。 あたしが彼の制裁にしゃしゃり出てくるのが気に入らないようで、 いつもブスッとしてきれいな顔を歪める。
今日も同じ。





「もうそこら辺でやめなよ、大人気ない。
 ねっ?君たちももう恭弥に逆らったり馬鹿なことしないもんね?」





首が折れるんじゃないかという位うなずく少年。
でもその襟は依然として恭弥につかまれたままで、 おまけに首元には彼の愛するトンファーが向けられていた。
幸いなのは打撲と擦り傷だけだということだ。 ……少年、君はなかなか運がいい。 いつもならあばら1本折れていてもおかしくないんだから。





に大人気ないとか言われるのって癪に障るんだけど?」



「でもあたしは思い通りにならないからって暴力で片付けようなんてことはしないわ。」





フンッと言ったか言わないか位のとき、恭弥は少年を放す。
ドサッとしりもちをついた後、慌てて走り出した。





「お友達が保健室で待ってるからねー!」





少年は一瞬振り向いたかと思うとすぐに走り出した。
恭弥の視線はまだ階段の方へ向かっている。 視線なんて聞こえはいいけど、実際はただ睨みつけている。





「これからって所だったのに。
 逃がしたもう1匹が君の所に逃げてきたの?」





あたしは答えない。あえて。代わりに





「屋上に来たついでに5時間目、さぼっちゃおうかなぁー!!
 どうせ次の時間って社会だから寝ちゃうしねー。」





大きな伸びを1つした後、苦笑しながらあたしは言った。
いつの間にか恭弥の視線は優しくなっていて、あたしに注がれていた。
あっ、今ちょっと幸せだったかも。





「なら僕もサボろっかな……。」





恭弥はそうつぶやくと、あたしの隣に腰を下ろした。
腕をつかまれる。
流れるような動作で彼はあたしを引っ張って隣に座らせると、ギュッと強く手を握った。










「ごめん。」





そう聞こえた気がしたけれど本当に彼はそう言ったのだろうか……?










例え聞いても教えてくれないだろうな、と結論を出すと、あたしは彼の腕を抱いた。