この恋の行方さえも示してはくれないだろうか……?




















私の隣の席は今日もまた空っぽ。
陽の光がポカポカと暖かそうなそこは放課後の一時だけ私の特等席となる。 とはいっても、授業が終わってからでは西日が眩しいだけの席なのだけど。
けどそれは私以外の人にとっては、の話であって、 私にとっては暖かいとか西日がきついなんてことはどうでもよくって、 ただその席に座れさえすればそれで満足なのだ。





だって彼の席だから。




















放課後の教室は今日も私独り。
グランドや体育館では部活に熱中している人たちの声がする。 更に音楽室の方からは楽器の音まで聞こえ始めた。
ここだけがまるで時間が止まったように、ここに息づくものが死んでしまったように閑か。
落日が蜜色に教室中を染め上げ、私が独りなことを浮き彫りにする。淋しさをより一層強くする。
夕陽とともに心は沈んでいく。暗くなっていく。先が見えない。
彼を次に目にすることが出来るのは一体いつ……?




















「僕の席に座るなんて一体君はどんな御身分なんだい?」





鋭い声が私に向かって飛んできた。
発したのはほかでもない





雲雀くん





彼を目にした瞬間、私の胸の奥の方で何かが跳ねた気がした。
久しぶりに見る彼は相変わらず綺麗で……





「あっ、ごめんなさい。
 いつもこの席って空いているから……。今空けるね。」





「あのさ、それよりも先に涙、拭いたら?
 まるで僕が泣かせたみたいで気分悪いんだけど。」





「!?」





慌てて頬に手を当てると、確かに冷たい感覚。
泣いていたことに気付かなかったことが不思議に思えるほどだった。










彼を不快にさせたから?
いや、そんなことなんかじゃなくて、ただ単純に彼に会うことが出来たからだ。
胸が痛いのだってきっと同じ。





「何?僕何か君の気に触るようなこと言った?
 僕は泣き止んでって君に言ったのに、なんだか酷くなってない?」










あぁ、私は何をしているの?
馬鹿馬鹿。
頭が働かない。 彼の声だけが脳内に録音され、反芻される。 ほかの音は止んだはずなどないのにいまや聞こえはしない。
眼だって次にいつ会えるか知れない彼を、ただ眺めることしかできない。










「あぁもうそろそろいい加減にしてくれないかな?
 僕だって辛いって言ってるのが君にはわからないの?」





「すっ、すいません。」










私がそう言った後顔を上げると頬を染める雲雀くんが目に入る。
夕陽の光ではない。
もうほとんど陽は沈んでしまったのか、西はわずかに赤いが東の方はすっかり暗くなってしまった。 濃紺のそこにはわずかな煌き。





じゃあなぜ……?





私は彼の言葉をもう1度繰り返す。




















ボクダッテツライッテイッテルノガキミニハワカラナイノ?





僕だって辛いって言ってるのが君にはわからないの?










気付くと顔が一気に熱くなる。
雲雀くんとバッチリと眼が合う。




















落ちたのは夕日だけじゃない。










夜空の海に1番星の

澪標











この恋の行方、きっと……