「遅い。」 雲雀は珍しく学校へは行かずに、家で1人で過ごしていた。 それもよりによって気をもみながら。 休日の 憂鬱 今日が僕の誕生日だと言うことを は覚えてくれているのだろうか……? 僕は心の中で呟く。 言葉の代わりに僕の口から出てきたのは、悲しいことに溜息だった。 には僕の誕生日は以前聞かれたときに教えたはずだ。 ……多分。あっ、いや。絶対に、だ。 こどもの日だったせいで に笑われた記憶がある。 (わぉ。なんて嫌な記憶なんだろう……?さっさと忘れてしまいたいね。) のために風紀委員のやつらが僕のために誕生日パーティーなんてものをやろうとしていたのを断りまでしたのだ。 それなのに が僕の家に来ないとなればとんだお笑い種じゃないか。 そんなの僕が絶対に許さない。 (……まぁもちろん、 いなくても僕はそんなパーティーになんて参加しなかっただろうけど。 だって僕は群れるのは嫌いだから。 群れてるような奴らを噛み殺す側の立場である僕が群れてちゃ駄目だろう? それこそ学校の風紀が乱れちゃうよ。 うん、まぁあくまでも多分だけど。 だって草壁があまりにも参加を勧めてきたら僕は断れないかもしれない……かもしれないだろ。) あぁそれにしても は遅い。 本当に僕の誕生日を忘れてるんじゃないだろうか? いや、ゴールデンウィーク中だし、もしかしてこんな年にまでなって家族旅行とか……? なら考えられなくも無い。 いや、もしかしたらあの『 』とかいうともだちとでも出かけている、なんていうのもありえるし……。 まさかこんな時にまでバイト……!? ありえる。いや、でも がそこまで金欠だったらこの間のデートを渋ったろうし……。 ん?っていうかそもそもいつもの ならバイトにしろ旅行にしろ、そういう予定が入ったら真っ先にメールや電話で連絡を入れてくるはずだ。 えっ、じゃあ僕もしかして に嫌われた? ……いやいやそんなまさか!!……ね。 ピーンポーン ほらねっ!!やっぱり に限ってそんなこと…… 「こんにちはー。宅急便ですー。判子もらえませんかぁ。」 あぁもう は僕のことなんて嫌いなんじゃないだろうか……。 判子を捺しながら僕は虚しくって悲しい気分になる。 とぼとぼと玄関から自室まで戻る間の僕の姿はさぞかし惨めだっただろう。 いや、むしろ惨めそのものだろう、と僕はぼんやり考えた。 テレビをつけても気になる番組なんてない。 気紛れに宿題なんてしてみてもまるで手に着かない。 読みかけのまま放っておいた本を読んでみても全くおもしろくない。 気に入っていたはずの漫画やゲーム、どれを手にとって見てもすぐにおもしろくなんてないことに気付いてしまう。 あぁ。僕はいつからこんなに に溺れてしまったんだろうか……? ピーンポーン 再度チャイムが鳴る。 はいはい、と僕は思わず呟いてしまった。 どうせまた宅急便だとか隣のおばさんからの回覧板だとかしょうもないものだろう。 「はいはい。」 期待なんてするな、なんて思いながらドアを開ける。 「お誕生日おめでとう。恭弥。」 開けた途端に聞こえたやわらかい声。 それは今度こそ間違いなく の物だった。 |