「ディーノ。」 「ん?何だよ 。そんなに顔して。」 「……あの、何、コレ。戦争の後か何かなの?」 「そんなわけないだろ!」 「へーそう。じゃあ何かしら?誰かと言い争いをしてそれが発展してこうなったみたいな? 別れ話はもつれた、みたいな?ってことは女?女なの? じゃあもしかしてあたしは二股をかけられていたってこと? ディーノってそういう人だったのね。ふーんふーんふーん。」 「だ、だから違うって言ってるだろ!!何勝手な想像してるんだよ!」 「(冗談だって。必死になっちゃってかわいーなー。)」 あたしが足を踏み入れたディーノの部屋はなぜかほんのり焦げ臭い。異臭を放っている。 ここは一体何があったんだ!?と思わずつっこみを入れたくなる感じだ。 あたしは昨日ちゃんとディーノには家に来ることを告げたはずだというのに、この人は家を片付ける気すらなかったのだろうか。全く。 ロマーリオさんからは仕事で部下は全員いないということは聞いていたけれど、いないとここまで酷くなってしまうとは……。 綱吉君に聞いていたとはいえ、なんだか目の前にすると脱力してしまいそうだ。 ……もしかしてロマーリオさんはあたしにディーノをおもりさせる魂胆なのだろうか……? 「あーあ。ディーノ、このカップ高いんじゃないの?こんなに粉々にしちゃってさ。」 「大丈夫だよ。それよりオレが片付けるから床はソファにでも座っててよ。」 「とりあえずそれは無理ね。これ以上散らかしたくないもの。」 あたしがそう言うとディーノは「えー。」という抗議の声をあげた。 「ここはオレの家なのに。」 「……お茶淹れてあげるからディーノこそ座ってて。」 「……。」 「やっと終わったー。」とあたしは思わず小さいながら呟いた。 異臭(キッチンからだと後々わかった。/料理でもしてくれるつもりだったのだろう。焦げた料理はお世辞にもおいしそうとは言い難かったが。) はまだ少し残ってはいるけれど、窓も全開、換気扇もバンバン使っているし、その内おさまるだろう。 カップの残骸もきちんと片付け、すっかりきれいにした。 「ディーノ。片付け終わったよ。」 紅茶をもう1度淹れながらあたしはディーノに声をかけた。 けれどもうんともすんともディーノは言わない。 あたしはディーノが返事をしないから拗ねてしまったのかもしれない、と思った。 頭ごなしに拒否したのはいけなかったんだろう。 「ディーノ。お茶、もう1回用意したんだけど。」 そう言ってソファに行くと、ディーノはソファの上で眠りこけていた。 きっとあたしに放っておかれて退屈だったんだろう。 「(元はと言えばあたしがディーノの家に行きたい、って言ったのにね。ごめん。許して。)」 あたしはそう心の中で呟くと、ディーノの横に座って寝顔を眺める。 眠っている彼はまるで少年みたいに幼くてかわいらしい。 あたしはディーノが目覚めるまで飽きることなくずっと隣に座っていた。 |