放たれる言葉はあたしの想いとは裏腹に冷たくなってしまうんだ。





Dry & Pale





「ちょっとオレ日本に行って来るから。」



「どうせちょっとじゃないんでしょ?」





嫌味ったらしくあたしは言うと、真っ赤なソファーに寝そべりながら雑誌をパラパラとめくった。 ここはディーノの部屋だというのにあたしはディーノよりくつろいでいる。 まぁそれだけあたしがこの部屋にいる時間が長いっていう解釈をすれば、 あたしたちは仲睦まじいカップルってことで喜ばしいことなのかもしれない。
……っていうのは自分の都合のいいように解釈しているだけなんだけれども。





「あっ。」





パラパラとただディーノから視線をはずすためだけにめくっていた雑誌のある1ページに目が留まる。 あたしは思わず凝視してしまった。
可愛い、淡いピンクのスカート。
欲しい、と思ったけれどいやいや、モデルさんが着るからこんなに素敵なんだ。 あたしなんかにはきっと似合わないだろうなぁ。と心の中で自身を納得させる。





「確かにオレの仕事は期間がちゃんと決まってるわけじゃないから が言うみたいに、ちょっとじゃないかもしれない。 けど逆に言えばちゃんと決まってないわけだから早く帰ってこられるかもしれないんだぜ。」



「あっそう、それはよかったね。」





あたしは一生懸命に弁解するディーノを軽く流す。
素直にしなきゃ!って思ういつもの自分と、 このまま冷たくしていれば向こうに行ったときに寂しくないかも……。 って思う汚い想いを抱えた醜い自分が頭の中で交戦する。
グルグルと頭の中であたしが行ったり来たり。
あーっキモチって難しい!あたしいつからこんなに優柔不断になってしまったんだろう……?





「なぁ 、だから機嫌直してくれよ。」



「うんうん。わかってるわかってる。 いーよいーよ、どーせあたしなんかよりも今度ボンゴレ十代目になる弟分の方が可愛くて可愛くて仕方ないんでしょ? 行ってらっしゃいマセ。ディーノがいない間もあたしはイタリアで1人楽しくやりますから。」





ローマーリオさんには電話するけどディーノにはしてやんないっ、と捨て台詞を吐くとあたしは再度スカートへと視線を移した。 ディーノのことを頭から離して、スカートのことを考えることにする。
値段はやっぱり妥当だと思う。 でも買ったのはいいけど、1度着てみたけどやっぱり似合わなくて、クローゼットの中で永眠してしまう可能性は充分あり得る。 そうなってしまったらやっぱりもったいないなぁ。






























チュッ





と甘い音がしてから、初めて唇に違和感を感じた。
えぇっ!?このタイミングですかぁっ!?と思うと同時に、くそっ、やられた!!とも思った。





「何すんのよ!」





と言って思わずディーノを睨む。
そこにはバツが悪そうに目を泳がせているディーノがいた。 悪さをしてしまって隠そうとしたけれど、嘘が下手くそで隠そうとしているけれどバレバレな子、、 もしくは悪戯の証拠隠滅を謀ったものの、バレてしまって怒られる前の子みたいだと思った。
ってかさっきからどこ見てるんだ。





「何って……キス、だけど……。嫌だった……?オレ、これで許してもらおうと思ったんだけど……。」





そんな眼をしないで……!!
許さない気マンマンだったのに、彼の眼差しを見てたら折れてしまいそうになる。





「なぁっ、絶対、すぐに帰ってくるって。」





最後にニコッ、と殺人スマイルをあたしに送ってきたディーノ。
あたし、こっちの方がいつもディーノが使ってる鞭よりも殺傷力っていうか威力?あると思うよ、って言いたくなった。
だってその笑顔を見たらあたし、何でも許しちゃうもん。





「もー、勝手にすれば。」





プイッとそっぽを向くあたし。
けれどすぐさまディーノの方を無理やり向かされてもう1度キスされる。
さっきから何なんだ!?





「仲直りのキス、なっ?」





あーもーホントに犯罪だよ、その笑顔は。怒る気を根こそぎ奪っていく。





「もー、知らない。もうディーノなんて知らない。」





そう言ってあたしはボフッ、と音を立ててやわらかいクッションに顔を埋めた。
ディーノがもうしないから 、許して!と言っているけれど相手にしない。してやらない。
もう1度スカートのことを考え始める。










やっぱり、買おう。あのスカート。





ディーノが日本から帰ってきたときあのスカートが似合うような素敵な女の人になれてればいいな。
もうあの笑顔には負けられないから。