彼女は彼のベットの上ですやすや。
そろそろ日も暮れる。





。起きろよ。
 もう帰らないとお母さんに叱られちまうんだろ?」





そう言いながらベットの上の をディーノは優しくゆする。
けれど彼女は一向に起きようとしない。
もちろん本当に眠っているわけなどではない。
彼女は口元にうっすらと笑みを浮かべているから……。





眠り姫





「起こしてよ、ディーノ。」



「充分起こしてるじゃないか。
 っていうかもう 、お前起きてるじゃないか。」



「違うわ。そういうことを言ってるんじゃないの。」





相変わらず は難解なことを言う。気まぐれと言ってもいい。
今日はどんなわがままなのだろうか……?
の考えることはいつも俺の考える以上に突飛だ。





「何が違うんだよ。」





ベットに広がっているつややかな黒髪をなでながら俺は優しく聞く。
俺の問いに は目をつぶっていてもわかる程に満足そうにすると、
(いや、 はいつだってそうだ。
 例え目をつぶっていても、楽しいのか怒っているのか悲しいのか、わかる)





「あたしは眠り姫よ、ディーノ。
 ねぇ、お姫様っていうのはどうしたら目覚めると思う?」





のピンク色でつやつやののやわらかいくちびる
(おっと、いけないこと考えちまった!おいしそうとか思ってないぞ!)
からはふわふわと言葉が出てきた。
は相変わらず口元の笑みは絶やさない。
それに比べて俺の浮かべている笑いは失笑だ。
それにしても姫って……。





「キス……?」



「そうそう。ねっ?だから起こしてよ、ディーノ。」





あーやっぱり。 は素直じゃない。
キスして欲しいなら欲しいって素直に言えばいいのに。
(俺はいつだってしたいんだ! が嫌がったら嫌だなと思ってしないだけ)
でもそこが愛らしい。
……なんて考えてたらイジワルの1つでもして構ってやりたくなってしまう。
俺はサディストじゃないんだけど。





「でも の王子は俺じゃないかもしれないぜ。
 そんでもって俺のお姫様は じゃないかもしれない。」



「絶対にディーノよ。お姫様のあたしが認めるんだもの。
 それにあたしがディーノのお姫様じゃなかったらあたしはそのディーノのお姫様を殺しに行くわ。」



「それはまたずいぶんと過激な発言だな、 姫。」





さっきまで必死で俺のいたずらに抵抗していたのに、今はもうクスクスと笑って楽しげだ。
クルクルと忙しく の表情は変わり続ける。
そんな彼女が俺は愛しくて愛しくて仕方が無い。





「ではではお姫様。それでは仰せの通りに。」





さっそく目覚めて






もらいましょうか。