夏空っていうのは妙に透明で淡い水色な気がする。 サイダーとかラムネとかそういう涼やかな飲み物をあたしに連想させるんだ。 そう考えてみると空に浮かんでいる真っ白い雲を炭酸のはじける泡とか、 あるいはなんとかフロート、みたいなやつにあるアイスクリームとか、そういうものに見立ててみるのもいいかもしんない。 暇すぎて、そんなことをついつい考えてしまう君がいない午後。 「えー、今日絶対いけるって言ったじゃん。」 「わりぃ。急に仕事が入っちまって……。」 「……わかったよ。けどまた今度ちゃんと埋め合わせはしてよね!!」 「そ、それはわかってるぜ!当然だろ!!」 これが今日の朝。 いつもはあたしの方からなのに、珍しくコロネロの方から電話がかかってきたと思ったら、午後に約束してた映画デートのキャンセルの電話だったのだ。 テンションかなり下がる。 けど、いつも”コラ”とか何とか言って強気で口が悪いコロネロがぼそぼそと気まずそうに話してくれて、悪いと思ってくれてるんだな、って考えたらつい許してしまった。 もちろん寂しいんだけど。けど……うん。やっぱり許してしまうんだよね。これが。 それに、仕事放り出してあたしとのデートに来る様な男でも困るから、結局こっちの方がよかったんだろうな。 ……はい。今あたし偽善言いました。 こっちの方がよかったとか何とか言ってるけど実は、というかやっぱり寂しく思ってる。 彼と付き合うようになってから強く思うんだ。あたし、自分のこと騙すのが、上手くなってるって……。 そんなことを思い出していたら、じわり、って涙が滲んできちゃって、目の前が掠れて歪んで、あたしは思わずあわわわわって変な声を上げてしまった。 な、何で涙止まらないの……!? 涙腺って一体どうやって締めるんだろう……? ぎゅっと目をつぶってみても止まらない。目を開ければまたパチパチとはじけるような感覚があたしの目に襲い掛かってくる。 キツい炭酸を飲んでしまったときとそっくりだ。 そう思ったら、なぜだかわかんないんだけど炭酸を飲まなきゃいけないような、そんな変な脅迫概念に駆られてしまって (きっとあたし自分で自覚しているよりもずっとコロネロにデートを断られたことがショックだったんだ。 じゃなきゃいつものあたしがそんな風になるわけないよっ!!) 涙だけ拭うと近くの自販まで行って、コーラを買うとその場で一気飲み。 すでに尋常な精神状態じゃないよ、なんてことを思いながら油断してたら、炭酸が口ん中でぶわって広がって、ばちばちはじけて、身体中を痺れさせた。 もちろん、目も一緒。 激しい刺激に耐えられなくなってぽろぽろと涙がまた零れる。 「まだ半分も残ってるよ……。」 痺れすぎてもうすでに飲む気になれないのに。 「 、何してんだ……?」 「コロネロにデート断られたから泣いてたら何でかわかんないけど炭酸が飲みたくなっちゃって、 そしたらまた飲んだら飲んだで炭酸がキツ過ぎて涙が出てきちゃったの。」 「それは悪かったな。」 「あぁそうでしょ……ってコロネロ!?」 気付くの遅ぇよバカ、と言うとコロネロはそのままの勢いで右手に持ってた荷物であたしの背中をばしっと叩いた。 「痛いよバカ!!コロネロのバカぁっ!!」 「はいはい悪かった。これでいいだろ?それ、お詫び。」 何?とあたしが聞いてもコロネロは開けてからのお楽しみ、としか答えてくれない。 とりあえず ん家行くぞ、って勝手にどんどん歩き出してしまったから、あたしは後ろから小走りについていく羽目になってしまった。 「あのさ、コロネロ。」 「ん?何だコラ。」 「(またコラだよ……。)そういえば仕事は?」 「あぁ、朝の?あれは嘘。」 「えっ!?じゃあ何で 「 、鍵。」 「……。」 家主はあたしなのに図々しいことにコロネロはあたしより先に家に入った。 しかも「なんか冷たいもんないかー?さっきんのコーラの残りでもいいからさー。」なんて言い出す始末。 あたしはそれを無視して「さっきの開けるからね。」と言ってから答えも聞かずに勝手に袋から出した。 ら、びっくり。 中からはなんと浴衣が出てきた。 あたしの驚いた顔がみられたからか、コロネロはすっごくいい笑顔でこっちを見てる。 (不覚にもドキッ!!ってしてしまった。) 「どうだ。気に入ったかコラ。」 あたしは声も出ない。 さっきのコーラを氷が入ったグラスに注ぎ込むコロネロを見ながら言葉を探すんだけど、何て言ったらいいのかわかんない。 「今日さ、 は忘れてるみたいだけどよ、並盛花火大会なんだぜ。それ着て一緒に行こうな。」 そう言うとコロネロはグラスの中身を一気に飲み干した。 自分が飲んでるわけじゃないのにまぶたの裏っかわがぱちぱちとはじけたみたいになった。 涙が出始めてるんだってそこでやっと気付いて、そしたらその瞬間に開けたばっかの浴衣の上に涙の滲みがボトッて。つ、いた。 あたしはあわてちゃってまた思わずあわわわわって変な声を上げてしまった。 何してんだ……!! 「ごごごごごめん!!ていうかその前にありがと!!」 「いいよ気にすんな。それより早く着てみろコラ。」 「うん!ありがと!!」 ……。 「あの、部屋とりあえず出てもらえます?」 「はっ?全部見たのに何今更言ってんだコr(ボフッ/ さんのクッションによる攻撃が見事命中☆彡) 炭酸色の午後 はラムネの色からコーラの色へと早変わり。 コーラに常夏の花・花火を浮かべて召し上がれ。 「えっ、ていうか結局何?コロネロってもしかしてそーゆープレイがしたかったの……?」 「……。(否定できない。)」 乃愛ちゃんへ いつもお世話になってます。大好き、の気持ちをこめて。 (こんな変態でごめんね。笑。) |