きっと、多分僕は決して手に入らないとわかっているからこそ君を、君の全てを、欲しがるんだね。




















「おいかけっこ?そういうの、オレ、嫌いじゃないよ。」





王子だってその位の遊び心があってもいいだろ?というオレの声が城内に響く。 続くのはパタパタという彼女の走る足音。 オレに勝てるはずもないことは当の昔にわかっているだろうに彼女はオレから逃げる。 息遣いは荒いはずなのに時折にしか聞こえない。 遠くまで逃げたのだろうか。まぁゆっくり狩ろうと決めると、それにしても浅はかな考えだ、とオレは彼女を嘲笑った。それこそ狂ったように。










まぁオレは狂っているのだから"ように"なんて表現は間違っているのだけど。




















「どこにいるのかなぁ?」





息遣いばかりが聞こえて、足音が止まった。 息遣いを必死に抑えようとしているのだが、抑えきれず、むしろ時折大きく息継ぎをする声がする。 泣きじゃくってるようにも聞こえて、なんとも、そそられる。





あぁ、やっぱりいいね。





って。
そんなオレはおかしいらしい。彼女はオレに向かって言う。





『狂ってる』





そうなのか?
こんなにきれいな彼女を目の前にすれば仕方ないとオレは思うけど。 言えないから、なのか……? 彼女がわからないのは。いやオレが間違っているはずなんてない。





だってオレは……!!





それに彼女はアサハカダカラ。




















「みぃつけた。」





彼女はうっ、と声を漏らすと目を見開いた。 薄暗闇の中、窓からの青白い光に照らされた彼女はより一層恐怖の表情を浮かべているように見える。 がたがたと震え、顎がかちかちと鳴っている彼女。





あぁ愛しい。なんてなんて……!!





オレはそぉっと手を取ってあげた。 途端、払い除けられる。怖がらせまいとオレは笑顔を見せる。けれど彼女はもっと怖がってしまったのだ。





何で?





オレはしゃがんで彼女の顔を覗き込んだ。すると思いがけない言葉が発せられたのだ。





「狂ってる。」





その言葉は思いの外オレを傷付けたらしく、オレは思わず立ち上がって彼女から離れる。 すると彼女ほその隙に逃げ出した。
あぁなるほどおいかけっこか。





「おいかけっこ?そういうの、オレ、嫌いじゃないよ。」




















堂々巡り。終わりなきオレと君のおいかけっこ。










醜いボクを


してくれ……!!










僕は君に手をとってほしいだけだったりして。でもそうだったら何になるというんだ……?