なぜだかわからないけれど授業中ずっと頭ん中で音楽が鳴っていた。 というか今も鳴っている。現在進行形。 ちなみにそれはお気に入りの曲だとか、最近テレビの音楽番組やラジオで聴いた曲ってわけでもない。 そこそこ有名なアーティストが唄ってて、そこそこ古くて (……リリースから1年もたっていれば古いと言えますよね?) 大ヒット!てわけでもないけど発売直後はオリコンで8位ぐらいには入っていた曲。 一言で言うと微妙。な曲。少なくとも今のあたしにとっては。
そういう曲に限って1度鳴り始めると止まらないもので、授業開始直後に鳴り始めたというのに、授業が終わった今もまだ、鳴り止まない。 鳴り止む気配すらない。 むしろ脳内で響く音は強くなってる気さえする。 その上こういうのって、やめばいいのにーと思えば思うほど脱け出せなくなる。 蟻地獄みたい。どつぼみたい。
とにかくあたしはナニモノかにはまってしまったのだ。
あたしに拒否権や選択権なんてたいそうなものはなくって、ただ、構える。





は や く や め … … ! !





何度祈ったってまるで無駄なのだ。
当然勉強なんて全く手につかないからノートも辛うじてとってる位で問題なんてまるで解けない。 わからない。あー、宿題出されたのに……!!
……あっ、範囲聞き忘れた。




















「沢田ぁー。」



「……何?」





沢田はあたしの方を嫌そうな顔でちらりと見たかと思うとすぐに教科書に視線を戻した。 次の英語の時間の予習が終わっていないらしい。





「そんな嫌そうな顔しないでよねー。」



「今オレ忙しいからしょうもない話に付き合ってられないの。」



「邪険にしなくても。大体あたし数学の宿題の範囲聞きたいだけだし。」



「問題集の35ページから37ページまで。」





沢田は結局あたしの方を見ないまま範囲を言ってしまった。





「ありがとう。ところで沢田、そこの訳、強調構文だから形式主語Itじゃいつまでも訳とれないよ。」



「えっ!?そうなの?」





沢田がちょうどそう言った瞬間にチャイムが鳴った。先生がデッキを持って入ってくる。
あたしはいつの間にか音楽が止んでいたことに今更気付いた。










今、 ラヴソング


が鳴り始めた










代わりに鳴り始めたのはきっと、胸の鼓動。