スクアーロがあたしが今現在いるアジトのリビングに入ってきたのをあたしは確認すると、 今まで座っていた革張りのソファーから立ち上がって、馬鹿丁寧にお辞儀をしてから 「今日もお務めどうもお疲れ様でした。」とこれまた馬鹿丁寧に言ってやった。
けれどもスクアーロはあたしのからかいに気付いているのかいないのか、「気色悪いぞぉ。」と一言言っただけだった。










不必要な言論遊戯










「あら、失礼ね。あたしがせっかく労ってあげてるっていうのに。」





元通りにあたしが座り直しながら言うと、スクアーロはフンッと鼻息をついてからジャケットを脱いだ。
妙に色気がある。
薄暗い空間で見るからだろうか……?





「お前は今日任務なかったのかぁ?」



「諜報活動には行ったわ。スクアーロみたいに殺しじゃなかったけど。」





諜報活動なんてつまらないと言わんばかりの表情を浮かべると、スクアーロはあたしの隣にぴたりと寄り添う様に座った。
ジャケットは3人掛のソファーの端に、それこそまるで居場所をなくされて追いやられたみたいにして置かれている。





「労いの言葉なんて必要ねぇぞぉ。」



「……そんな言い方はないんじゃない……?それこそあたしからなのよ……?」





肩を抱かれる。あたしは顔を背ける。





「逃げんなよ。」





妙に鼻にかかった言い方の直後、抱かれただけだったはずの肩はスクアーロの胸にまで寄せられた。
いつものコロンの香りは残っていなくて、汗と血の匂いだけがした気がした。





「労うなら身体で労え。」





口付けながらスクアーロはあたしの着ていたブラウスのボタンを1つ外した。