応接室でいつものように真面目に風紀委員の仕事を黙々とこなす僕を尻目に、彼女はというと、1人で難しい顔をしている。




















ある午後の昼下がり 君が呼ぶ



















「雲雀。」





突然呼ばれて正直少し驚く。 そういえばもう1時間近く彼女とは何も話していなかったということにここでやっと気付いた。 流石にこれだけ放っておかれては、拗ねてしまったのかもしれない。 悪いなぁと思ったから優しく声をかける。





「何?」





ついでに彼女の方に視線も向けると、彼女はあいかわらず難しい顔をしている。 でも拗ねているのとは、また違った感じに僕には見えた。





「恭弥。」





僕がせっかく返事をしているというのに彼女は気に留める様子を全く見せることなく、再度僕のことを呼んだ。





「……だから何?」





だから流石の僕もイライラと答えた。 棘が混ざった解答。





「うーん。」





彼女は今度は悩み始める始末。 さっきから一体どうしたというのだ。僕のイライラは増すばかり。





「……ねぇ、何それ。さっきからふざけてるの?」



「ふざけてなんかないよ!」





僕が聞いたと単に彼女は慌ててそう答えた。訝る僕。





「じゃあ何?」



「いや、『恭弥』より『雲雀』の方が綺麗だし、あたしは好きだなぁって、思っただけだよ。」





僕は彼女の顔をじっと見つめる。 な、何よ。と言って彼女は頬をわずかに膨らませた。
そしてそういえば彼女が雲雀、と1度目に呼んで、2度目は恭弥、って呼んでいたということを思い出した。
なるほど、と心の中で僕はうなずく。





「自分も雲雀になるっていうのに、君は何を言ってるの。」





な、何言ってんのよ、と言って、彼女は僕にクッションを投げつけた。ひょい、と僕はかわす。
恭弥なんてもう知らない。なんて言って彼女はそっぽを向いてしまった。
あーぁ、耳まで真っ赤じゃないか。
しかも雲雀の方がいいって言いながら恭弥ってちゃんと呼んでくれてるし。










なんて可愛い君。