砂 の 城 作るのは困難で崩すのは容易に出来るそれは、まるで壊されるためにあたしによって作られたのかと錯覚してしまうほどに易々と彼の手によって崩された。 さらさらと風に乗せられて舞ったせいで、砂があたしの目に入ってしまった。 あたしの意思とは無関係に、目からは涙がぽろぽろと零れてきた。 「はっ!?何この位のことで泣いてんの?意味不明なんだけど!!」 「どっかでせっかく作ったものを簡単に壊した人がいたのと、その弊害である砂が飛ぶという現象のおかげで目に砂が入ってしまった模様です。」 「あっそ。でもオレ謝んないよ。だってオレ 「王子だもん。」 オレの台詞取らないでよ、と彼は不機嫌そうに言った。 あたしは彼をからかうように彼の口調を真似て言った。 「あたしの城崩さないでよ。」 「オレはいいの。王子だ 「だって……」 あたしは彼と違う言葉を被せてしまった。 あたしと違って彼は、王子だもん、としか言わなかったのだ。 ベルはシシシと笑っている。 相変わらず嫌な笑い方をしているなぁ。 逆に感心する。 「 、引っ掛かってやんの。オレ、”だって”なんて言ってないよ。」 あーそーですかー。 あたしはそう言うと立ち上がった。 スカートについている砂を掃う。 さらさらとしていて、淡い黄色である砂は風の波にそって泳いだ。 夕日に照らされて光ったかのようにあたしの目には見えた。 「帰ろう、ベル。」 「 が帰りたいならオレはいつでもいいよ。」 元々 が期待って言ったから来たんだし、と言うと彼は歩き出した。 自分も結構楽しんでいたくせに。 まだまだ子どもだ、と思ってから数秒後、あっ、王子は子どもだから”子”とついているのか、と妙に納得してしまった。 酒も飲んでいないのに酔っていたのかもしれない。 コーラで酔うことは可能なのだろうか……? 「ボス、帰ったら怒ってるかな?」 「さぁ?一日位いいんじゃね?それよりスクアーロとかレヴィの方が煩わしそうだと思うんだけど。」 「それはあの二人は真面目だもの。」 「それはオレやマーモンが不真面目って意味?」 「少なくともベルに関してはそうなるわね。」 マーモンとはあんましゃべらないし。 とあたしが付け足すと、あぁー、お前、王子を侮辱した罪は重いぞ、なんて言ってベルはナイフを取り出した。 あぁっ!?それは幾らなんでもナシだろ!! 「ごめんごめん取る消すから許してっ!!」 「許さない。」 シシシ……とまた嫌な笑い方をベルはした。 「キス、代わりにしてくれたら許してやってもいいよ。」 「……そんなこと言うなんて貴方は間違ってるよ。」 あたしが消え入りそうな声でそう言った。 ベルは相変わらずシシシとあの嫌な笑い方のままだ。 「 が間違ってるって思っても関係ないよ。だってオレ王子だもん。」 近付いてきた彼に向かって、あたしはもう1度聞こえるか聞こえないかわからないような小さな声で呟いた。 「貴方は間違ってる。」 だってベルからのキスなんてあたしにとっては罰に値しないじゃない。 あたし、ベルのこと好きなのよ。 |